モバイルビジネスを良くするための施策とは

MVNO協議会で講演した総務省電気通信事業部事業政策課の谷脇氏は、モバイルビジネスの活性化に向けた取り組みを説明した。

» 2007年07月12日 02時05分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 MVNO協議会は7月11日、東京都内で会合を開き、総務省情報通信政策局電気通信事業部事業政策課の谷脇康彦課長が講演を行った。先に発表されたモバイルビジネス研究会の報告案について総務省の見解を説明した。

 6月27日に公表された報告案(関連記事参照)では、携帯電話端末の販売制度や通信事業者が端末の利用を制限する「SIMロック」の見直しを提言するとともに、移動体通信サービスのビジネスモデルのオープン化に向けてMVNO(仮想移動体通信事業者)参入促進のための環境整備についても言及されている。

谷脇康彦事業政策課長

 谷脇課長は講演の冒頭で、現在の携帯電話市場がNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社でほぼ占められ、事業者がインフラや端末販売、サービスを包括的に提供する垂直統合型の閉鎖的なビジネスモデルを導入しているとの認識を示した。

 また携帯電話に関連した新たな市場として期待されるコンテンツビジネスや法人向けのソリューションビジネスの可能性についても言及。「新市場を成長させる上でも、現在のビジネスモデルに加えてオープンなビジネスモデル(水平分業モデル)の導入が必要だ」と述べ、MVNOの重要性を説明した。

 谷脇課長によれば、固定通信ではNTTなどの設備を利用して通信サービスを提供するMVNO(旧第二種電気通信事業者に相当)が全国に約1万事業者あるという。だが移動体通信では、ウィルコムのPHS網を利用してデータ通信サービスを提供する日本通信やソネット、KDDIのau網を利用するいすゞ自動車の商用車運行支援サービスなど数えるほどしかない。

 移動体通信でのMVNOによるビジネスでは、固定系MVNOによるモバイルと固定網の複合サービス(FMC)やCATV、ISPによる地域密着型のモバイル通信、ベンチャー企業やSIerによる法人向けモバイルソリューション、また自治体の通信サービスへの参入も想定されるという。

 しかしながら、実際にMVMOとして事業を展開するには具体的なビジネスモデルの立案や課金・決済手段の確立、通信設備を持つ事業者との交渉など、数多くの課題が立ちはだかる。7月9日には日本通信がNTTドコモとの相互接続について菅総務相に裁定を求めるなど、既存のMVNOも課題を抱えている。

 谷脇課長はMVNOの新規参入を促がす取り組みとして、07年度内にMVNOのガイドラインを再度見直すとし、事業化などに関する相談窓口の明確化や既存事業者との協議ルールの明確化、電気通信法や電波法などの法制度に関わるFAQの公開などを行うとしている。また、汎用なアプリケーションを携帯電話端末で利用しやすいよう、携帯電話各社が進める端末プラットフォームの共通化を支援する研究会を年度内に設置するという。

MVNOの参入促進による効果と施策

 近年では契約者の個人情報や位置情報を利用したサービス(経路案内や災害対策サービスなど)も登場している。MVNOでは既存事業者に対して個人情報の提供・利用を求める声が挙がっているというが、既存事業者からは個人情報保護法を理由に断れるケースが多いという。

総務省が想定するモバイルビジネスの将来モデル

 谷脇課長は、「次世代の移動通信サービス(WiMAXなど)では個人情報の円滑な利用が大切だと考えおり、総務省では事業者間での個人情報の利用は法律に抵触しないものと考えている」と語った。

 参加者らからは、「モバイルビジネスの将来性に行政が介入しすぎているのではないか」「技術的な視点に立った検討が十分に行われていない」といった意見が寄せられた。

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