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» 2007年08月06日 07時00分 公開

ITトレンドの“眼”:崖っぷちのMSオンラインサービス事業、その「再生」のシナリオ

グーグルやヤフーといった宿敵に対して劣勢を強いられているマイクロソフトのオンラインサービス事業。ここにきて強力なテコ入れを図っているが、はたして勝機を見いだすことができるのか。

[松岡功,ITmedia]

 「2008年度(2008年6月期)、オンラインサービス事業でビッグウェーブを巻き起こしたい」

 マイクロソフト日本法人のオンラインサービス事業の責任者である笹本裕 執行役常務オンラインサービス事業部長は、8月2日に開いた同事業の戦略説明会でこう強調した。

 マイクロソフトのオンラインサービス事業は、ポータルサイト「MSN」と、インターネットからソフトウェアサービスを提供する「Windows Live」の2本柱からなる。同社の定例記者会見の一環として行われた同説明会では、マルチメディアコンテンツの実行環境「Silverlight」や検索サービス「Live Search」に代表される最近発表された新機能などを紹介した上で、笹本氏が2008年度にビッグウェーブを巻き起こすための3つのポイントをこう語った。

画像 オンラインサービスの事業戦略を説明するマイクロソフトの笹本裕 執行役常務オンラインサービス事業部長

 「1つ目は、さまざまな新機能を駆使することによって『感動×感謝の最大化』を図ること。2つ目は、新しい広告領域の実現。そして3つ目は、ソフトウェアとサービスの融合を図ること。特にMSNとWindows Liveを相互に補完させながら、ソフトウェアとサービスの融合を図っていくところに、当社としての一番の強みがある」

真っ向勝負ではなく独自性を強調

 ちなみに、今年2月1日付でオンラインサービス事業の責任者に就いた笹本氏は、リクルートで「ISIZE」事業をはじめ、電子メディアなどの新事業を推進したあと、MTVジャパンで社長を務めるなど、コンテンツビジネスにおいて豊富な経験を持つ。就任1カ月後の3月2日にオンラインサービス事業の新たな取り組みについての記者会見を行い、今回の会見ではその進捗を披露した格好である。その表情には確固たる自信がうかがえた。

 会見に出たオンラインサービスに詳しい記者からは、「このところ相次いで打ち出した新機能は、これまでのマイクロソフトには見られなかったオンラインサービスへの“本気”の取り組みが感じられる。笹本氏率いる新体制に大いに期待したい」との声も。同社のオンラインサービス事業はこれまで、米国本社においても日本法人においてもさまざまなキャリアを持つ人材が陣頭指揮を執ってきたが、勢いよく事業を拡大するところまでにはなかなか行かなかった。その理由は、そうした人材の問題より、会社を挙げて同事業に本腰を入れてこなかったことの方が大きいとみられるが、ここにきて相当“本気”になってきたことだけは確かなようだ。

 それは取りも直さず、この分野においてグーグルやヤフーといった宿敵に対して劣勢を強いられている現状があるからだ。今回の記者会見でも「今の取り組みで、グーグルやヤフーを打ち負かすことができるか」との単刀直入な質問が出た。これに対し笹本氏は、「打ち負かすというよりも、ソフトウェアとサービスの融合戦略を軸に、当社として一段と独自性を発揮していきたい」と語り、「真っ向勝負」を口にすることはなかった。

 とはいえ、マイクロソフトには“本気”にならざるを得ない理由がある。それは「このまま手をこまねいていると、ソフトウェア事業に進出してきたグーグルに『本丸』まで攻め込まれかねない」(前出の記者)からだ。その意味では、マイクロソフトの首脳陣には「崖っぷち」とも言える危機感があるのではないだろうか。

 はたして再生のシナリオ通りに事を進めることができるか。“ビッグウェーブ”に乗れるのか、はたまた飲み込まれてしまうのか。マイクロソフトのオンラインサービス事業にとっては、2008年度がその正念場となりそうだ。

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