「Vista」の登場がLinuxデスクトップ普及を後押し?

米DellのクロフォードIT戦略担当は、Windows Vistaの登場がLinuxデスクトップの繁栄につながるだろうと主張する。

» 2007年08月10日 15時13分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
eWEEK

 現地で開催されている年次イベント「LinuxWorld Conference & Expo」で、DellのITストラテジストであるコール・クロフォード氏が、「Linuxデスクトップ――現実かFUDか、はたまたファンタジーか?(The Linux Desktop-Fact, FUD or Fantasy?)」と題する講演を行った。同氏いわく、「Windows Vista」は、Linuxデスクトップがマーケットシェアを得るための唯一最大のチャンスを生み出したのかもしれないという。

 例えば、多くの企業がVistaを導入したあとでWindows XPに戻っているとクロフォード氏は話し、起業家であり、セントルイスのワシントン大学助非常勤講師でもあるスコット・グラネマン氏の次のような言葉を引用した。「Linuxマシンにうんざりしたいなら、それで仕事をしてみろ。Windowsマシンに幻滅したいなら、それを導入してみろ」(グラネマン氏)

 Microsoftはすでに15年以上もデスクトップ市場を支配しており、「したがって今後は落ちていくしか道は残されていない。反対にLinuxは上昇するだけであり、成長の可能性は膨大だ。デスクトップ市場におけるシェアがわずか1%のLinuxに対し、Microsoftは90%超を確保しているが、状況は変わりつつあり、2年間以内にLinuxのシェアは拡大すると考えられている」と、クロフォード氏は述べた。

 Evans Dataの最近の発表によれば、Windowsを対象にしている開発者の数は2006年に12%減少し、同時期にLinuxを対象にした開発者は34%増加したという。

 また、NovellやXandros、LinspireといったLinuxベンダーとMicrosoftが結んだ互換性に関する提携は、これまでのところよい結果につながっており、特に、Linuxの開発を、企業組織が大量のLinuxカーネルを製作するという流れに乗せた点は大きく評価できると、クロフォード氏は指摘した。

 さらに同氏は、実際にはだれもLinuxカーネルを所有していない状態がSLA(Service-Level Agreement)の実現をより困難にしている事実を、マイナス面として挙げた。Microsoftはクライアント市場で15年間におよぶ優位を保っており、大半の企業がオペレーティングシステムにWindowsを使うことに満足しているが、Linuxデスクトップ市場にISV(独立系ソフトウェアベンダー)およびIHV(独立系ハードウェアベンダー)エコシステムが創出するにはまだ時間がかかると思われる。

 とはいえ、1ベンダーに依存する時代は終わりを告げた。Microsoftがオープンソース開発コミュニティに接近している事実からも、同社がその重要性を認識していることがうかがえる。Linuxデスクトップは、あらゆる層に適しているとはまだ言えないが、数を確実に伸ばしていると、クロフォード氏は述べた。

 同氏によれば、企業向けデスクトップは、ビジネスユーザーに焦点を絞り、社内規定に準拠し、互換性およびセキュリティに配慮して、エンタープライズカーネルやリモート管理機能の搭載、さらには標準化されたアプリケーションのインストールを行っておく必要があるという。

 「Linuxデスクトップには、これらすべてが可能だ。同OSの旧バージョンと互換性があるし、Windowsとも基本的に連係できる。エンタープライズカーネルを搭載でき、既存の管理ソリューションを使ってのリモート管理も可能だ」(クロフォード氏)

 Linuxデスクトップ躍進の原動力となっているのは、イノベーションと自由性、さらにはWindowsに対するユーザーの不満だと、クロフォード氏は言う。また、Windowsとは異なり、Linux開発コミュニティーはLinux技術そのものに影響をおよぼし、方向性を与えていくことができ、今ではシンクライアント上でもスムーズに機能するようになった。

 もっとも、ソフトウェアのパッケージ基準を確立するという大仕事が残っており、そのうえ、プリンタやオーディオなどに必要なドライバをLinuxに対応させることもきわめて重要だ。「異なるディストリビューションを、共通のリリースサイクルに乗せていくことも必要だ」(クロフォード氏)

 レジストリを持たず、実行する際に許可が必要になるファイルだけで構成されているLinuxは、Windowsよりはるかに安全だと、同氏は主張している。しかも、クロフォード氏がWindowsコンポーネントの中で「ActiveX」に次ぐ害悪と言い切っている「DLL」も存在しない。

 クロフォード氏は、今日のLinuxは企業デスクトップとして使用するのに十分な能力を備えているが、ほかの技術と同様、完璧を追い求める必要はないと述べ、Microsoft環境であっても、Linuxディストリビューションを業務用オペレーティングシステムとして使用することはすでに可能だったと付け加えた。

 「今年は、互換性にすぐれたLinuxデスクトップの年になる。ドライバのサポートがLinuxデスクトップの成功を左右すると思われるが、標準化によって普及はさらに加速するだろう。標準化と相互運用の推進が大幅に進む可能性は、非常に大きい」(クロフォード氏)

 それでもLinux業界は現在、Unixの二の轍を踏むことになるのか、あるいは統合と普及の路線を行くかという岐路に立っているという。「他者との差別化を図りたい場合は、Linuxの勝利が見え始めてからにしてほしい。今、われわれに何より必要なのは、一致団結することなのだ」(クロフォード氏)

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