「やったのは誰だ」――犯人探しに陥らない不良率改善ベテランから新人まで現場の情報共有(1/2 ページ)

現場は人間が動いている。製造業の現場では不良品が発生し、その発生率を下げることが至上命題だ。犯人探しに陥らない現場カイゼンとは。

» 2007年08月17日 07時00分 公開
[大西高弘,アイティセレクト編集部]

導入前の課題

不良品の改修情報が管理しきれていなかった。また改修に関する情報を整理した形で蓄積、共有されておらず、結果として不良品の発生率が下がらなかった。


導入後の効果

改修情報が蓄積され、管理できるようになった。改修情報も共有され、効率的な作業が実現。改修の時間が短縮された。結果として不良品の発生率が低下した。


 1963年、自動車板金加工業からスタートした二幸製作所は現在、事業の幅を広げ機械筐体や製缶、各種架台などを設計から塗装、組み立てまで一貫生産でこなす企業にまで成長した。

 同社はサイボウズ社のデータベースソフト「デヂエ」を2005年に導入し、生産工程の改善を図り、不良品の発生を大幅に低減させた。

 金属加工といってもさまざまだが、同社が顧客から依頼される仕事は精密さが要求されるものが多い。発注元は機械メーカー、プラントメーカーが主で機械、プラント設備を利用するユーザーの要求のレベルが非常に高いためだ。同社は自らもモノづくり企業であると同時に、自社の製品によって日本のモノづくりを支えているわけだ。

 同社のような企業は高いレベルの生産管理能力を求められる。数万個の部品を大量生産するわけではないので、生産のサイクルが循環する間に、人の経験や知恵などが入り、そのレベルの高さが生産工程そのもののクオリティを決定する。顧客はさまざまな用途の金属加工製品を発注するわけだが、ここでの注文内容に対する精度が同社の業績に直接響く結果となりやすい。

トラブル発生後の対応力

 「発注していただく製品は、手で抱えられるものから、重機で持ち上げないと運べないものまでさまざまです。そして、これは同業他社も同様だと思いますが、ちょっとしたことで不良品が出てしまうことがあります。その発生を減らすことと、改修を素早く済ませて、お客さまに迷惑をかけないことが最重要課題です」と語るのは、同社専務取締役の金子隆氏だ。

二幸製作所 専務取締役 金子隆氏

 不良品の発見は製作途中と納品後の2つのケースに大きく分かれる。製作途中で発見された場合、納期に間に合わせることができるかが、緊急の問題となる。また、納品後に発見された場合は改修の時間が短いほど良い。不良品発生はできればゼロにしたいところだが、現実的にはそれに対応する能力がいかに高いレベルかが競争力の源になる。発注側もその対応能力で加工業者として同社を見て、さらにレベルの高い製品の発注を判断することは容易に想像できることだ。

 不良品の発生原因は多様だが、同社では不良品の発生に関する情報の管理、生産現場と営業の間でそれらの情報を共有し活用するという観点から、改善を図ることにしたという。

 金子氏は次のように語る。

 「デヂエを導入する前は各担当者が個別に不良品発生に関する情報を管理していました。もちろん情報共有の取り組みはしていたわけですが、十分とはいえなかった。情報の更新やリアルタイムで最新情報を閲覧する仕組みを作らないと、不良品発生や改修する情報を共有できないと考えました」

 ウェブベースで閲覧でき、入力も簡単、特別な専門の管理者を必要としないデヂエの導入はスムーズに進み、05年から各現場で利用されだした。

 不良品が発見されると、製品担当者がデータを入力し、その情報を社内の誰もが閲覧できるようになった。デヂエに入力する係の社員はいるが、これも専任ではなく兼務者である。工程管理者も当然こうした情報を閲覧しており、適正な生産活動を指示する。

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