社員を救う“2.0”は本命なのか?エンタープライズ2.0時代の到来(1/2 ページ)

エンタープライズ2.0の本質は、イントラネットの変革だ。日ごろ業務の効率化を考えていても、最近ではインターネットの情報が社内情報と相まってしまい、収集がつかなくなっている人が多いのではないだろうか。

» 2007年08月27日 08時00分 公開
[吉川日出行,ITmedia]

 どうやら2007年はエンタープライズ2.0というキーワードが流行らしい。

 既にこの特集でも何人かの識者がエンタープライズ2.0の定義などについて述べられているが、筆者は今のところ「エンタープライズ2.0」というものは、単純に新しいイントラネットだと捉えたほうがよいと考えている。

 今までの社内システムなりイントラネットを1.0としてみた時に、それを進化させて昨今の社会環境や各企業のおかれた状況にマッチさせたのが2.0だろうと考えている。

 それでは、なぜそもそもエンタープライズも2.0にならなければいけないのだろうか? 単純に、Web2.0が流行ったから? そうではないだろう。その背景には、今までのイントラネットでは対応できない出来事が起こり始めているからと捉えたほうが自然だ。

 その出来事とはひと言でいえば、「情報洪水」と「専門化」である。

情報過多は企業における生産性向上の障壁に

 情報化社会の到来と共に生まれたこの情報洪水と言うべき流れは、インターネットの普及に合わせて急速に進んでいる。今現在もインターネット上では日々、無数のサイトやブログが生まれ続け、毎日のように新たなサービスが発表されている。その中には、情報交換の内容も文字から画像そして動画へとどんどんとリッチになっているのだ。

 この情報洪水の流れが企業内にもひと足遅れてやってきたのだ。内部統制やJ-SOXの流れによって企業内のマニュアルや手続きは膨大に膨れ上がり、通達や連絡文書は山のように押し寄せる。社内には個別業務を効率化するためのシステムが散在し、外部からはこれまた膨大なニュースが日々大量に押し寄せる。

 さらに、ERPパッケージの導入や業務フローの策定によって、主要な手続きは全社的に標準化されたものの、個別商品や顧客事情毎の細かい細則には十分に注意する必要があり、判断が必要な都度上司や監査部門からのチェックや牽制の追加情報が加わる。今、ビジネスマンは、朝会社に出勤した瞬間からこうした膨大な情報に取り囲まれながら業務をこなしている状況だ。1日に読まなければならないメール数や連絡文書の数はうなぎ上りであり、まともにそれらを読んでいたら、それだけで退社時間になってしまうほどだ。

 もう一方で、一時期に強力に推進された業務効率化の結果、同じ部署内で同じ仕事をやる人はめっぽう減っている。昔ならば、課の仕事は課員全員で取り組むものといった考え方の元、特定の仕事が属人化しないように課員全員がローテーションで担当していた。複数人で同じ仕事を担当し、突発事項に備えて冗長性を確保しただろう。しかし、最近では担当者は自分だけでバックアップは課長というケースが少なくない。同じ課内であっても同種の仕事に取り組む人はおらず、そのような業務や経験といったノウハウは本部や、ほかの部署に聞かない限り手に入らない傾向にある。

 さらにこの専門化と情報洪水は相互に影響し合っており、増え続ける情報に対処するために細かく担当分けした専門化が進むにつれ、今度は各専門分野ごとのより細かい情報が求められる。その結果、さらに情報が増えるという循環を生んでいるのだ。

 そして専門分野が細分化されるほど、流れる情報の中で自らの担当分野以外の情報となるノイズの割合は高まり、このために必要な情報を抽出するといった新たな負担が生まれる。

 それでもちょっと前までは、各個人の努力によってこのような状況を回避していたが、ここに来てそれももう限界に近づいているという意見が多い。

情報を的確に整理することが望まれている

 このような背景から、これからの企業内情報システム、すなわちエンタープライズ2.0はこうした「情報洪水」と「専門化」を解決することができる必要性があるのだ。逆にいうと「情報洪水」や「専門化」が進む中で、働くビジネスマンのワークスタイルを支援するシステムこそが、エンタープライズ2.0だと考えれば良いのではないだろうか。

 それでは、「情報洪水」や「専門化」を解決するために、昨今の企業内情報システムがどのような方向に動いているかというと、筆者は今の企業内システムでよくテーマに挙がる以下の5つがその特徴だと捉えている。

 実際にエンタープライズ2.0に分類されるシステムが企業内で具現化される際には、これら5つの特徴の中で幾つかを持ったものになるはずである。

 例を挙げてみよう。

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