アルカテル・ルーセント、NGN市場での台頭目指す「高可用性」戦略

日本アルカテル・ルーセントは、NGN(次世代ネットワーク)市場へ食い込もうとするエッジルーティングの製品戦略を改めて披露した。

» 2007年08月27日 10時22分 公開
[ITmedia]

 日本アルカテル・ルーセントは8月22日、既存製品の説明会を開催。キャリア市場向け製品には「HA」(High Availability)が不可欠とし、そのユーザーメリットをデモした。

 アルカテル・ルーセントのHAは、障害時などでもサービスを継続するための機器の高可用性を実現する機能。同社のHA対応製品は現在、マルチサービス・エッジルーティングとして「7710SR-c12」(伝送速度12Gbps)、「7750SR-7」(100〜200Gbps)、「7750SR-12」(200〜400Gbps)を、またメトロイーサネット/MPLSアグリゲーションとして「7450ESS-6」(80Gbps)、「7450ESS-7」(100〜200Gbps)、「7450ESS-12」(400Gbps)の合計6機種がラインアップされている。

画像 デモに使われた7450ESS-7と7750SR

 これらのうち代表的な製品は2003年に投入したサービスルータ7750SRだが、これまでにワールドワイドで約170社が導入、中でもトップキャリアとされる30社中13社で稼働中という。この結果、キャリア向けエッジルーティング市場でのシェアは、2006年第2、3四半期で11%を維持し、第4四半期ではさらに20%をクリア、シスコシステムズに次ぐ第2位につけている。

画像 日本アルカテル・ルーセントの田中厚技術本部IPグループマネジャー

 同社はすでに全社の売り上げ1億ドルを達成しているが、この好調さを支えるキーアプリケーションとして、日本アルカテル・ルーセント カスタマーソリューションズ技術本部IPグループマネジャーの田中厚氏は、トリプルプレイを挙げる。代表的なユーザーには米AT&Tがある。またオールIPで新しいバックボーン構築を行う「IPトランスフォーメーション」も最近伸びつつある分野で、英BTの構築するNGN(次世代ネットワーク)がその例となっている。そのほかに注目すべきはモバイルネットワークで、「今後はアクセス系IPがヨーロッパやアメリカで浸透し、重要な要素となるだろう」という。

NGNにHAが必須となる理由

 同社がキャリア市場においてHAを重視している理由として、田中氏は「IPサービスは今や、電話に加えてテレビも含まれるようになった。キャリアサイドで見てもテレビからの収入源は今後大きな比重を占めるはず。HAはそのためのキーソリューション」と説明する。例えば企業で、ERPなどのアプリケーションがネットワーク障害によって停止すると、たとえ年間のダウンタイムが5分以内というファイブナイン・アベイラビリティー(99.999%)であったとしても、それによる損失額は約6万8000ドルにも及ぶという調査機関の報告もあるなど、きわめて深刻な事態が想定される。「さらにキャリアの場合はその損失額も莫大ではないか」(田中氏)。

 そのため、ルータなどの機器には迅速な障害復帰機能が求められる。他社製品などでは、Graceful Restart(GS)と呼ばれる回復支援機能に、隣接ノードを利用し、リカバリ中はルータ回復中でもトラフィックを引き続き転送するような技術を利用することが多いという。これに対し同社では、個別プロトコル環境の停止を防ぐノンストップルーティング(NSR)技術に加え、多くのプロトコルが稼働するキャリア環境でもサービスを停止させないノンストップサービス(NSS)技術などで対応している。

画像 マルチキャスト映像配信を利用したHAのデモ。7450ESSのアクティブマネジメントモジュールを抜いても、伝送中の映像が停止したようには見えない。他社製品では映像回復までに約30秒かかった

 HAのメリットを実証するデモでは、マルチキャスト映像配信システムのトラブル発生時に、他社製品が復帰までに30秒かかるところを、同社のHA搭載の製品ではルーティングが停止せずに映像を送り続ける耐障害性をアピールした(同社では停止時間50msを保証)。

 すでに同社では、BTの子会社BT Exactによるサードパーティ試験のルータ評価でファイブナイン・アベイラビリティーの“お墨付き”を得ているが、さらにデジタルハイビジョンクラスの映像品質の確保を目標としている。現在、日本のNTTPCコミュニケーションズを含む同社のキャリアユーザーでも、トリプルサービス実現のためにHAは不可欠だという実感を持っている。ある国内キャリアでは、VPLS(Virtual Private LAN Service)ベースの広域イーサネットサービス環境で7450ESS-7を約30台利用、2006年3月〜10月まで月間稼働率100%で、一度もトラブルなしという実例も報告された。

 同社はいま、コア系におけるビジネス性は期待しておらず、完全にエッジルーティングのみにフォーカスした戦略をとっている。田中氏は「今後投入する製品はすべて基本的にHA対応させる方針。遅くとも来年には、モバイルにフォーカスした機種を投入予定」という。

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