「モバゲー」の成功はまだまだ通過点?夏目房之介のその後の「起業人」(1/2 ページ)

「モバゲータウン」で大成功しているように見えるけど、まだ彼女にとってエッセイストへの道は遠いんだろうか。

» 2007年08月28日 07時00分 公開
[夏目房之介,ITmedia]

 ディー・エヌ・エー(DeNA)の社長南場智子さんの記事が7月23日付の日経新聞に載っていた。携帯情報サイト「モバゲータウン」のCMの企画をマーケティング責任者から聞いてOKを出したが、海外出張から帰って放映中のCMを見てみたら、イメージとまるで違っていた。それが「中年の女性たちが地下鉄構内で派手な衣装で踊る」ものだった。たしかに、ちょっと異様な違和感を伴う印象で、僕の記憶にも残っている。

 南場さんは、これで「非常に不機嫌」になり、変えてくれと責任者を呼んで指示した。周りからも「いくら何でも」と言われ、ガミガミ言ってしまったが、CMの効果は大きく、浸透し始めてから急速に会員が増えたという。

 女性の南場さんとしては、たしかにあのCMに違和感を感じるのはやむをえないと思える。でも、彼女は「任せるといったのに、自分の好みで介入してはいけない」と反省し、逆に現場が指示をはねつけたことを頼もしく思ったと書いてある。

 これを読んで僕は、相変わらず率直で事柄の描写が面白いな、と思った。

 南場さんを取材したのは「ITセレクト」誌2003年11月号だが、取材時間が非常に短かったわりに、面白いインタビューだった。

 事前に読んだ資料の中に、彼女が書いた記事もあったのだが、それがやはり会社設立などをめぐる自分の失敗談を率直に書いたもので、読物として面白く、しかもその誠実さで信頼感をもてるようなものだった。変わっていないなーと思ったのである。

 文章もよくできていて、その取材で僕は「エッセイストになれますね」と正直に言ったのだが、彼女はイスから飛び跳ねるように喜んで、握手してきた。

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