設立4年で増収に転じる東芝ソリューション、それを支える中国オフショア成功の秘訣とは(1/3 ページ)

東芝ソリューションが設立4年目を迎えた。昨年度までは売上の拡大に苦しんだが、ここにきて拡大基調に転じ始めた。ITエンジニアが不足する中、その好調を支えているのは東芝グループが11年にわたり“我慢強く”展開してきた中国企業Neusoftとのオフショアリングだ。Neusoftの第二の拠点・中国大連で両社の首脳陣に取材した。

» 2007年10月04日 12時00分 公開
[松浦義幹,ITmedia]

 ITソリューションベンダーとして東芝グループの旧関連企業数社が合併して設立された東芝ソリューション。2003年10月に設立され、この10月で丸4年を迎えた。「設立後3年間は、増益は達成できても、売上規模は下降傾向にあった。それが4年目に入り、東証の次期システムに絡む金融業界のシステム増強案件やSOX法がらみの新規案件が増え、売上が増収に転じた。何よりも当社の実力が多くの企業に認められてきたことが大きな要因」と語るのは、東芝ソリューションの梶川茂司取締役社長。

 当然、こなす開発案件も飛躍的に増えた。ITエンジニアの不足で多くのシステムインテグレーターがバックオーダーに苦労する中、東芝ソリューションはこれらの開発案件を中国・瀋陽に本社を構え、大連にも大規模な開発拠点を持つNeusoftにオフショアリングすることで順調にこなしている。Neusoftと東芝グループの関係は96年に「沈陽東東系統集成有限公司(東東システムインテグレーション有限会社)」という合弁会社を両社で設立して以来、11年の長期にわたる。現在では、東芝ソリューションが外部発注を行う東芝グループ以外の協力会社400社の中でNeusoftは第1位の受注額を占め、そのシェアは15%にも達している。発注量は半期で約5000人月、これを日本のコストの3分の1程度で賄っているという。

Neusoft 中国遼寧省瀋陽市に本社を置くNeusoft。従業員数は1万人を超える

 Neusoftは中国最大級のソフトウェア開発グループ。瀋陽の東北大学教授だった劉積仁氏(現在はNeusoftグループの代表取締役会長兼CEO)の研究室が母体となって91年に設立された。現在では従業員が1万人を超え、瀋陽、大連、南海、成都に大規模な開発拠点を構える。オフショア事業の大手顧客としてはノキア、フィリップス、SAPなどが名を連ね、日本企業では東芝と並んでアルパインとの関係が深く、日本企業からのオフショア開発の売上シェアは30%近くに達するという。成長企業のトップとして重視している点について、劉会長は「内部的には若い会社だけに社員のリーダーシップの育成。外部的にはグローバル化にさらに対応できる新たなパートナー企業の模索。それらを実現することで、“世界の製造工場”に続き、中国はソフト開発でも生産性と品質で競争力を強め“世界のソフト工場”になれる」と話す。

トップ2 劉積仁 Neusoftグループ代表取締役会長兼CEO(左)と東芝ソリューションの梶川茂司取締役社長(右)

 Neusoftの中で東芝ソリューションのオフショア開発を担うのは商用軟件事業部だ。日本向けの開発環境を整えた開発業務の専門事業部で、1300人のスタッフを擁し、業務系アプリケーション開発が9割を占め、残りは組み込み系アプリケーションの開発。同事業部を率いる張秀邦総経理によれば、技術力の高さに加え、日本流の開発文化、商文化を理解し、さらに高い日本語力が同事業部の強みだという。「中国におけるオフショアの歴史は長いが、10年以上の取引関係を継続している当社と東芝ソリューションのようなケースは少ない」と強調する。

張秀邦総経理は、日本向けの開発業務を行うNeusoft商用軟件事業部を率いている

 オフショア開発については、多くの日本企業が中国のほか、インドやロシアなどで展開しているが、失敗しているケースも少なくない。失敗の原因としては「言葉の壁」や「商習慣の違い」などが指摘されるが、東芝ソリューションとNeusoftの場合も「当初はトラブルの連続だった。それを根気強く解決しながら、徐々にではあるが良好な関係を築いてきた。ところが、4年前の当社設立時に発注量が急激に増えたことにより、再び仕事の質が低下、トラブルが激増した。これが大きな契機となり、良好なコミュニケーションづくりに本腰を入れて取り組み始めた。その結果、今では上層部同士はもちろん、現場スタッフ間にも信頼関係が芽生えた」(梶川社長)とし、東芝グループのオフショア開発11年の歴史において、この2〜3年が業務の質量ともに充実した“結実の時”であることを強調する。

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