設立4年で増収に転じる東芝ソリューション、それを支える中国オフショア成功の秘訣とは(2/3 ページ)

» 2007年10月04日 12時00分 公開
[松浦義幹,ITmedia]

成功要因は「大連」と「仕様書」

 両社のオフショア開発の成功を支える要因は2つある。1つはオフショア開発の拠点が中国・大連であること。大連は戦前、日本の支配下にあったことから日本語に堪能な中国人がもともと多く、しかも大連市自体が産業界、教育界一体となって日本語教育に力を入れている。大連は日本企業のアウトソーシング基地としての経済発展を鮮明に打ち出しているのだ。

 2つ目の要因は、東芝ソリューションの管理手法や方法論をベースにオフショア開発の「要求仕様書」の精度を高めたことだ。オフショア開発の責任者である恩地和明取締役は「顧客企業からの設計要求をきちんとドキュメント(仕様書)に落とせるかどうかがオフショア開発の最大のポイント。とくに日本の企業システムは仕様変更が多く、またカタカナや略語も多い。この辺が中国人には理解しづらい。これらの改善に最大限の努力を払った」とし、最近では東芝ソリューションのIT技術研究所が持つ自然言語処理アルゴリズムを使ったチェックツールも活用して、Neusoftの技術者が目にする要求仕様書を精査しているという。要は、業務フローから日本人特有の“曖昧さ”を排除し、中国人にも理解できるマニュアル化された業務フローに改善したことが大きな成功要因だ。

東芝ソリューションの恩地和明取締役

 Neusoftの劉会長も、東芝ソリューションのこの姿勢を高く評価する。「日中間の協業において製造業での成功事例は多いが、ソフト開発ではまだ少ない。その理由は、ソフト開発におけるトラブル処理が非常に難しいからだ。双方で責任の押し付け合いを演じるケースがほとんど。それに対して、東芝ソリューションは改善意識の強いベストパートナーだった。その意識が当社の若い技術者たちにも伝播した」。一方の東芝ソリューション梶川社長も「ソフト開発で失敗を重ねるのは当たり前。相手が中国企業でも、日本の地方企業でも、それは同じこと。オフショア開発に関するネガティブな意見の多くが、この当初のトラブルだけで語られることが多い」と指摘する。どうやら、オフショア開発の成功には企業の“懐の深さ”も求められるようだ。

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