新たなタイプの出現は? 世相を反映した起業家像の行方Weekly Access Top10

時代を映し出す要素の1つに「起業家像」がある。ヒルズ族の次に現れる起業家たちはどういったメンタリティーを持つのか――。

» 2007年10月06日 07時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 今週は、F1レースの現場を支えるThinkPadという一風変わった記事がランクインした。良い意味でエンタープライズ“らしくない”内容に、興味を引かれた読者も多いはず。取材当日、担当記者から会社に電話があった。受け手は、マシンの放つごう音で相手の声が聞き取れなかったという。記者は、車関連についてまったくもって疎いのだが、電話越しにでも伝わってきたあふれんばかりの臨場感を味わってみたい。

 ビジネスで成功したIT関連の新興企業が軒を連ねる「六本木ヒルズ」。最近、それらの企業の「ヒルズ離れ」が進行しているという。ヒルズ族の象徴とされてきた楽天やライブドアは、相次いでヒルズからオフィスを移転させた。理由はさまざまあるのだろうが、これらの動きは、ITベンチャーという一種のバズワードの栄枯盛衰を描いているかのようだ。

 メディアはヒルズ族の起業家にこぞって焦点を当てた。メディア映えする「個性的で野心に満ちあふれた」若手社長を数多く取り上げ、人々に現代の起業家像を植え付けた。

 エンタープライズチャンネルでブログを掲載しているマンガコラムニストの夏目房之介氏は、IT起業家を「新たな分野にチャレンジする個性派だが、生まれながらの楽天性を持っていることが特徴」と分析する。

 さらに、IT起業家を、志士型、技術者型、自己完結型、成り行き型などに分類できるという。志士型は、本宮ひろ志の作品に影響を受けた人が多いとも指摘している(関連記事参照)

 技術者型の起業家として、はてなを起業した近藤淳也氏やmixiの笠原健治氏などが代表例に挙がる。彼らの持つビジネスマインドは、ヒルズ族のそれとは異なる。企業を大きくして利潤を追求するのではなく、自分が実現したいことを仕事に投影し、仲間と楽しく仕事をすることを第一に考えるという。

 かつて日本で流布した、「国民1人ひとりがまじめに勤労することで、日本は経済成長を遂げる。国民全員で、明日の日本を作る」といった考え方は、もはや現代において支持を得られない。人生における成功モデルとされてきた「マイカー所持」に対して、若者が感心を示さなくなってきたという話から、“ジャパニーズドリーム”的なライフスタイルを求める人が少なくなっているとも考えられる。

 国策に自己を投影させる時代は終わろうとしている。人々は“自分らしさ”を求めて人生をおう歌する。そのような空気の中で育った人が起業家となるとき、利益以外の何を追い求めるのか。

 5年、10年後の起業家は、現在の起業家とまったく異なったタイプが出てくるのかもしれない。それは、現代社会や世相を反映させた時代の寵児ともいえよう。次にメディアをにぎわす希代の起業家がいつ現れるのか、不安と同時に少しばかりの期待を抱いている。

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