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» 2007年10月02日 06時00分 公開

F1レースの現場を支えるThinkPad(1/2 ページ)

自動車レースの最高峰「F1」。現代のF1では車体開発からレース運営にいたるまでITが欠かせない。日本GPの現場でその様子を垣間見た。

[國谷武史,ITmedia]

 自動車レースの最高峰「Formula 1(F1)」は半世紀以上の歴史を持ち、その時代の先端を行く自動車技術が惜しみなく注ぎこまれてきた。1980年代からはコンピュータ技術の導入が本格的に始まり、現代のF1では車の開発からレースの運営まで、もはやITが不可欠な存在となっている。

 こうした流れを象徴するように、F1カーの外観をまとうスポンサー企業のロゴも世界的なITベンダーが名を連ねる。従来はタバコメーカーがその主役を務めたが、世界的な禁煙化の動きから影を潜め、世界的なITや通信業界の企業が続々とF1へ参入した。これらの企業では資金提供だけなく、F1チームのインフラシステムも提供する。英国の名門チーム「AT&T Williams」をスポンサードするLenovoも、こうしたベンダーの1社である。

 AT&T Williamsは、1975年からF1に参戦し、これまで製造者部門で9回、ドライバー部門で7回の年間優勝実績を持つ。過去には車体の姿勢を能動的に制御する「アクティブサスペンション」(1994年以降使用禁止)や加速時のタイヤの空転を抑える「トラクションコントロール」をF1で初めて実用化するなど、技術力に定評がある。Lenovoは今年から同チームのスポサードを開始し、レースカーの開発・設計に用いるスーパーコンピュータシステムやノートPC「ThinkPad」を供給している。

20台以上のThinkPad

 9月28日〜30日に静岡県の富士スピードウェイで開催された日本グランプリ(GP)には、20台以上のThinkPadが持ち込まれた。チーム広報によれば、このうち10台以上の端末をレースエンジニアが使用し、練習走行や予選、決勝の各セッションでレースカーから収集した走行データの解析やシミュレーション、データ管理、レースカーのセッティング管理、セッションごとの運営計画など幅広く利用しているという。残りの端末はチーム広報やマーケティング担当などが日常業務に利用する。

 富士スピードウェイでのF1開催は30年ぶりだが、コースは2005年に大改修が行われており、すべての参戦チームにとって富士スピードウェイは事実上未経験のサーキットになる。各チームでは事前に綿密なシミュレーションを行ったといわれるが、28日に行われた合計3時間の練習走行では大半のチームがレースカーの調整とドライバーの習熟に時間を割いていた。Williamsチームから参戦するドイツのニコ・ロズベルグ選手とオーストリアのアレクサンダー・ヴルツ選手は、初体験のコースについて「1.5キロメートルの直線とコーナーが入り組んだ構成で、体力的にも厳しいコースだ。ベストなセッティングを早く見つけたい」とコメントしていた。

コースとピットのわずかなスペースに設置された指令センター。モバイルPCを利用するのはWilliamsだけで、McLarenやFerrariといったトップチームはデスクトップを利用。来場者がピット周辺を散策できる時間帯は指令センターにも近づけるため、セキュリティの観点からWilliamsの取り組みは一歩進んでいるような印象を受けた

 今シーズンのWilliamsのレースカー「FW29」には、車全体で約120カ所のセンサが取り付けられている。センサからは速度やエンジンの回転数、オイルや冷却水の温度、タイヤの空気圧、油圧、電子システムの稼働状況といった詳細なデータが走行中のFW29からリアルタイムにピットへ送信される。エンジニアは、こうしたデータを解析しながらサーキットごと、セッションごとに最適なセッティングを決定し、決勝レースを勝ち抜くためのシナリオを組み立てている。

 練習走行では、FW29から送られたデータをコース脇に設置されたチームの指令センターが受け、サーキット側から提供される気象や走行タイムなどの情報とともに、エンジニアやレースの戦略を立案するレーシングディレクターがセッティング内容や走行のタイミングを、ピット内のエンジニアやドライバーへ指示する。1回の練習走行は1時間半だが、各ドライバーは数周おきにピットインをして、FW29のウイング(空気抵抗で車体に加重をかけ、走行を安定させる)の角度や車高、サスペンションの硬さ、エンジン出力などを調整し、何パターンもセッティングを試していた。

 こうした作業は分単位で行われるため、F1レースの現場では膨大な走行データを高速に処理できる性能が求められる。Williamsチームは、ピット内での各種情報の解析にモバイルワークステーションの「T60p」を使用する。

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