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» 2007年10月16日 18時43分 公開

企業の危機管理は“意識”だけ先行――総合危機マネジメント協会が発足

危機監理の人材育成を目指すNPO法人「総合危機マネジメント協会」が発足。協会調査で、危機管理が十分ではない企業の実態が明らかになった。

[國谷武史,ITmedia]

 危機管理の意識啓発と専門家育成を目的とするNPO法人「総合危機マネジメント協会」の設立会見が10月16日、東京都内で行われた。併せて同協会が行った企業の危機管理に関するアンケート調査結果(速報)が発表された。

 同協会は、自然災害やテロ、ITセキュリティ、経済、企業の不祥事など、さまざまなリスクに対する意識の啓発と専門家の育成を目的に活動する。代表・理事に元内閣安全保障室長の佐々淳行氏、理事長にフォーバル会長兼社長の大久保秀夫氏が就任した。

総合危機マネジメント協会設立を発表する佐々淳行元内閣安全保障室長

 会見の冒頭、佐々会長は「2001年9月11日の米同時多発テロ事件以降、さまざまな危機管理の重要性が叫ばれてきたが、時間が経つにつれて国民の意識が薄まっているとの危機感を持つようになった。日本を取り巻くリスクは多岐にわたり、危機管理を実行していける専門人材「危機管理士」の育成が急務だ。将来は、これを国家資格とし、自治体や企業を問わず活躍できる人材育成を全国規模で行っていきたい」と抱負を述べた。

 危機管理の専門家育成では、首都大学東京が昨年春に全国の大学に先駆けてオープン講座「総合危機管理講座」を開設。これまで、官公庁や企業の防災担当者、危機管理担当者など、400人近くが受講したという。

 首都大学東京の高橋宏理事長は、「行政や企業は住民や社員の生命財産を守るのが最重要使命の1つだが、危機管理を十分に行えている組織がほとんどないというのが実情だ。危機管理意識を持つ人材を1人でも多く輩出し、非常事態に対処できる社会環境の実現に寄与したい」と話した。

体制はあるが中身が不十分

 同協会では、7〜8月にかけて上場企業など162社を対象に、危機管理や緊急事態体制に関するアンケート調査を実施。その結果から、危機管理体制を構築しつつも、実際の対策内容までを整備している企業がわずかにとどまっている実態が明らかとなった。

 まず、危機管理の対策について「方針を用意している」と回答した企業が67.9%に達したものの、「事業や部門単位で被害金額を算出済み」が25.9%、「事業継続計画(BCP)を策定済み」が21.6%にとどまった。「定期的にリスク評価を行っている」は48.8%となった。

危機管理の具体的な対策が十分になされていない状況が明らかとなった

 次にBCPの整備状況では、「1週間以内に本社機能の移設が可能」が9.3%、「非常時の原材料仕入れや生産拠点の複数確保」が34.6%、「情報のバックアップ体制を確立」が83.9%、「財務基盤の分散監理」が54.9%となった。危機管理部門や責任者(役員など)の設置状況では、「常設部門がある」が68.5%、「担当役員を配置」が62.3%となった。

 災害予防策の実施状況では、「火災保険に加入」が98.8%、「定期検査」が83.3%、「消火器や検知器の定期点検」が98.8%、「防災器具の導入」が63.6%となった。

 留意すべき企業不祥事に関する質問(複数回答)では、「欠陥商品問題」が63.8%、「経営の不祥事」が48.8%、「情報漏えい」が36.4%、「環境汚染」が35.2%と上位を占めた。また、不祥事の原因で重視するものは、「行動基準の不明確さ」が59.9%、「社内監査の不備」が50%、「営業活動の優先」が46.9%、「問題を明るみにしない風土」が44.4%となった。

 これらの結果について、大久保理事長は「危機管理体制を構築しても、実際に何をどのようにしたらよいか分からないという企業の実像が浮かび上がった」と述べた。

J-SOX法への対応状況では、すでに準備を整えている企業が少ない実態が明らかになった

 危機管理の専門資格の必要性については、「不必要」が25.9%、「分からない」が47.5%を占め、「必要」と答えた(13.6%)企業を大幅に上回る結果となった。「危機管理の意識があっても、実行しようという考えがほとんど無いようだ」(大久保氏)

 同協会では今後、災害やテロ、ITセキュリティ、企業不祥事の各分野で危機管理専門家を育成する体制の実現や、啓発事業を行っていくとしている。

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