“ついうっかり”の漏えいは“外”部統制で対処――アドビとBIGLOBEが提携

情報の流出を未然に防ぐことに加え、不正流出した情報による被害を最小限に食い止めることが今後の文書管理に求められる。NECビッグローブとアドビシステムズは、これらの課題を解消するサービスを共同で提供する。

» 2007年10月24日 16時17分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 「これからの文書管理は内部統制だけでなく外部統制が必要だ」――2006年度、個人情報漏えい事故の発生は1000件あまりに上り、合計2000万人以上が被害を被った。これらの情報漏えいは、不正持ち出しやメールの誤配信など“ついうっかり”した人為的なミスが原因という。人為ミスを減らすことは難しいため、これからの文書管理には、内部統制で文書の外部流出を未然に防ぐだけでなく、流出後の被害を最小限に食い止めることが必要とされる。

 アドビ システムズ(アドビ)とNECビッグローブ(BIGLOBE)は10月24日、文書のアクセス制御や権限の遠隔操作などをインターネット上から一元管理できるASPサービス「BIGLOBEドキュメントコントロールサービス」を発売した。PDFファイルのアクセス制限を統合管理するサーバ製品「Adobe LiveCycle Rights Management ES」の技術と、さまざまなネットサービス基盤を企業に提供するBIGLOBEのプラットフォームサービスを連携させたものだ。

image 握手をするNECビッグローブ飯塚氏とアドビシステムズのイルグ氏

 同サービスでは、ポリシーを詳細に設定できるのが特徴だ。オフラインでの閲覧や文書の暗号化、ドキュメントのコピーや編集作業に当たり、「誰がどのような権限でどれだけの期間」閲覧できるかを決定する。文書に電子透かしを付与することも可能だ。

image ポリシーの情報の画面イメージ。各種権限はマトリクスで表示される

 社外ユーザーのポリシーは、メールアドレスを入力し、ドキュメントに対する操作権限と有効期限をメニューから選択するだけで設定できる。クライアントは、Adobe Readerさえあればポリシーが付与されたPDFを閲覧できる。

 見積書の失効日や新製品情報の開封日を指定したり、設計書の改版管理や設計図面の期間限定共有といった用途が期待される。

 もちろん冒頭で述べたように、不正流出した文書に関して管理者側で閲覧を禁止できるのも特徴だ。上記のポリシーに準じた流出文書を遠隔操作で管理できる。

 価格は初期費用が40万円。月額費用はID数に応じてそれぞれ、60万円(500ID)、80万円(1000ID)、100万円(5000ID)となる。提供は12月3日から。3年間で30億円の販売、500社への導入を目指す。

アドビとBIGLOBE、提携の意図は?

 なぜアドビとBIGLOBEは提携したのか。アドビシステムズのギャレット・イルグ代表取締役社長は、BIGLOBEを「高いレベルでの可用性を提供するなど、日本で信頼性のある基幹サービスを持っている」と評価。アドビは提携により、日本で初めてASPサービスを展開する。日本でミッションクリティカルなサービスを提供するには、パートナーが必要と踏んだわけだ。

 日本では、J-SOX法の施行に伴い、セキュリティやライツマネジメントといった観点が問題視されている。ビジネスDRM(デジタル著作権管理)で高い評価を誇るアドビの技術が採用されたことを受け、「広範かつ高度のセキュリティを持つ文書管理を実現し、最高のDRMを提供する」とイルグ氏は意気込む。

 「これを皮切りに企業向けASPを拡大していく」(NECビッグローブの飯塚久夫代表取締役執行役員社長)――今後は、文書管理システムや複合機、メールサーバといった業務システムと連携できるWebAPIを提供する予定だ。他社製品との連携も可能となる。また「OSに依存しないAIR(Adobe Integrated Runtime)やFlashの技術を使った企業向けサービスも発売する」と今後の展開を述べた。

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