カリフォルニア州の山火事で浮き彫りになったBCPの重要性

しっかりとした事業継続計画(BCP)を備えた企業は、大規模な山火事という危機にも効果的に対処しているようだ。

» 2007年10月25日 16時46分 公開
[Karen D. Schwartz,eWEEK]
eWEEK

 米カリフォルニア州南部の大規模な山火事で、地元の企業は自社の事業継続計画(BCP)に頼ることを余儀なくされている。しっかりとしたBCPを備えている企業は災害に効果的に対処しているが、そうでない企業では業務に重大な支障が生じているようだ。

 サンディエゴに本社を置くOverland Storageは、この山火事で大きな影響を受けた。市内および近郊に住む同社の260人の従業員の多くが、直接的または間接的に影響を受けているのだ。同社の本社には危機が迫っていないものの、広範囲にわたる火災の影響で、技術サポート電話への対応などの業務を担当する従業員が出社するのが困難な状況になっている。同社のバーン・ロフォーティ社長によると、従業員はセキュアなVPNおよび全社規模のイントラネットを通じてリモートで業務を継続しているという。

 ロフォーティ氏によると、山火事が続いている間は携帯電話の利用を制限するよう当局から要請があったため、Overland Storageでは、会社と従業員の自宅を電話回線で接続し、テキストメッセージを通じて従業員と連絡を取っている。

 「当社の業務機能を維持し、従業員が日常業務で平常心を保てるようにすると同時に、このような大規模な災害に対処する上で、セキュアなネットワーキング技術が重要な役割を果たしている」と同氏は語る。

 顧客への迅速なサポートの提供を維持するために、各地のOverland Storage支社の従業員も支援に駆けつけている。また顧客への対応を迅速化するために、同社の英国支社の技術サポートチームも、米国内の顧客からの問い合わせに応答している。

 サンディエゴを本社とするKinteraでは、業務効率の改善を支援する自社のSaaS(Software as a Service)製品を活用することで、顧客サービスに支障が出るのを防ぐことができた。

 Kinteraのリッチ・ラバーベラCEOは、「われわれはSaaSプロバイダーとして、当社のソフトウェアソリューションを支障なく顧客に提供し続けるための対策を用意しているので、この地域に被害をもたらしている山火事は、当社の顧客サービスにほとんど影響しなかった」と話している。

 しかしサンディエゴに住むKinteraの従業員の多くは、この災害で何らかの影響を受けているため、同社は緊急事態対応計画を発動した。同社のスコット・クローダーCTO(最高技術責任者)によると、この計画では、Kinteraのサンディエゴ本社とは独立して運用されるフォールトトレラントシステムと冗長データセンターが利用される。さらに、障害復旧計画の一環としてKinteraはほかのデータセンターにも従業員を配備しているため、サンディエゴの本社から主要業務システムを素早く切り替えることができるようになっている。また、同社のITスタッフは全員、リモートからすべての基幹業務システムにフルアクセスして仕事をすることができるという。

 やはりサンディエゴに本社があるセキュアなコンテンツ管理/アーカイビング製品のベンダーであるSt. Bernard Softwareでは、オンデマンドサービスプロバイダーという自社の立場を生かして事業継続/障害復旧体制の構築を進めてきたが、今回の災害でその成果が発揮されたという。

 St. Bernard Softwareのビンス・ロッシCEOは、「われわれは既に、CRM(カスタマーリレーションシップ管理)システムやバックオフィスの会計システムなどの重要なインフラをデータセンターに移し終えていた。これは、当社の顧客向けオンデマンドサービスインフラを運用しているのと同じデータセンターである。当社の従業員の多くが自宅から避難し、われわれが最初の影響を感じた10月22日当初の時点では出社した一部の従業員しか仕事をできなかったにもかかわらず、この体制のおかげで業務を継続することができた」と話す。

 火災の影響が直接及ばない地域にある企業でも、いざという事態に備えている。コンピュータセキュリティ会社、Websenseの社屋は避難地域内にはないが、同社は10月22日、サンディエゴ在住の従業員に、火災の影響がある場合は自宅にいるよう告げ、翌日には、従業員が自分の問題に専念できるようサンディエゴの本社を閉鎖した。同社の広報担当者、キャス・パーディ氏によると、その間も多くの従業員が、ノートPCや電子メール機能を備えたPDAから会社のネットワークにアクセスして自宅で仕事を続けたという。

 Websenseでは、必要となれば事業継続計画を発動する考えだ。同社は2003年にサンディエゴで起きた山火事の後で事業継続計画を強化した。

 「この山火事の後で、われわれは詳細な事業継続計画を策定し、サンディエゴでの業務を補完するためにグローバルなテクニカルサポート体制を構築した。これはグローバル企業を目指した取り組みの一環でもある」とパーディ氏は話す。

 同氏によると、Websenseでは業務に支障を与える可能性のある出来事に備えて、緊急事態対応計画を定期的に見直しているという。

 「今回の災害はまだ終わっていない。状況が落ち着いてくれば、今回の教訓を整理し、必要に応じて計画を修正するつもりだ」(同氏)

 Kinteraの方針も同じだ。ラバーベラ氏は、今回の危機を乗り切るのに緊急事態対応計画が役立っていると評価しながらも、山火事による危険が過ぎ去った後で、災害時における従業員の連絡体制を見直すつもりだという。

 「われわれはこの2日間、業務上および個人的な件で従業員と連絡を取るのに、主として電子メールとインスタントメッセージングに頼っていた。どちらも効果的だが、将来は、災害時に従業員ともっとうまく連絡を取れるような代替技術やシステムを検討したい」と同氏は語る。

 St. Bernard Softwareのロッシ氏も同じ気持ちのようだ。

 「録音済みメッセージを入れたホットラインや、情報を伝達するための電話連絡リストなど、従業員との連絡用の仕組みは用意していたが、少なくとも初日の時点では、150人の従業員のうち30人か40人くらいは連絡が取れなかった。

 このためロッシ氏は、従業員の自宅の電話番号だけでなく個人の携帯電話の情報を収集するとともに、災害時に会社に連絡する方法および会社から従業員に連絡する方法に関して明確な指示書を用意する計画だという。

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