現状の出願済みLinux特許に対する一考察Trend Insight(2/2 ページ)

» 2007年11月08日 08時30分 公開
[Danny-R.-Graves,Open Tech Press]
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Linuxに関係する特許および特許出願の検索

 交付済み特許について米国特許データベースのタイトル検索で“Linux”を調べたところ、「Linuxから Windowsへの移行」(Centaris Corporation――2007年出願)、「WindowsファイルのLinuxシステム上での閲覧」(Gateway, Inc.――2007年出願)、「Linuxでのオンライン診断」(IBM―2004年出願)という3件がヒットした。同じく出願中特許について米国特許データベースのタイトル検索で“Linux”を調べたところ16件がヒットし、その考案内容は、「LinuxシステムでのUSBデバイス開発をサポートするオペレーティングシステムリソースの診断」(Electronics and Telecommunications Research Institute:韓国――2006年出願)、「Linux組み込み電子デバイス」(Moxa Technologies:台湾――2005年出願)、「Linuxをベースとしたモバイルヘッドセットでの圧縮解凍技術の利用」(Bitfone Corporation:カリフォルニア――2005年出願)などというものであった。

 交付済み特許について米国特許データベースの要約(抄録)検索で“Linux”を調べたところ17件がヒットし、その考案内容は、「異なるオペレーションシステム間でのリソース転送」(譲受人不明――2001年出願)、「航空機搭載コンピュータでの遠隔および自動操作によるデータ読み込みの始動とデータ取得」(譲受人不明――2002年出願)、「ネットワーク接続を介したオペレーティングシステムのリモートインストレーション装置」(Akamai Technologies:マサチューセッツ――2002年出願)などというものであった。

 同じく出願中特許について米国特許データベースの要約(抄録)検索で“Linux”を調べたところ75件がヒットし、その考案内容は、「Webブラウザオペレーティングシステム」(National Science Foundation――2005年出願)、「煙探知器」(譲受人不明――2003年出願)、「移動体通信でのLinuxベース組み込みシステムの実装」(Pantech Company, LTD:韓国――2004年出願)などというものであった。

 交付済み特許について米国特許データベースの請求範囲検索で“Linux”を調べたところ76件がヒットした。同じく出願中特許について米国特許データベースの請求範囲検索で“Linux”を調べたところ373件がヒットした。これら多くの特許および特許申請では「請求××のデバイス、手法、システムで使われているオペレーティングシステムはLinuxである」といった従属型の請求が行われている。そうした1つの事例は特許公報20040221275(Computer Associates Think, Inc.)に見られるもので、その独立クレーム(請求)としてはターゲットシステムにカーネルを適用する手法と装置が記されていて、従属クレーム(請求)としてこのカーネルがLinuxカーネルを指すことが述べられているのである。

 交付済み特許について米国特許データベースの明細書検索で“Linux”を調べたところ4697件がヒットしたが、これは出願日を1995年にまでさかのぼった結果である。同じく出願中特許について米国特許データベースの明細書検索で“Linux”を調べたところ1万6694件がヒットした。図1は、その明細書においてLinuxに言及されている特許および特許申請の総数を出願年別にまとめた結果である。これを見ると、交付済み特許の数は2001年にピークを迎えており、特許申請の数は毎年増加し続けているという傾向が分かる。ただし先に触れたように、このうち2006年と2007年に出願された特許申請の中には公開前のものがあり、ここには含まれていない分があるはずである。つまり両者の傾向に違いが生じているのは、おそらく2002年以降に出願された特許申請にはいまだ係属中(特許として受理されるか拒絶されるかの審議中)のものが多いためであろう。そのため、これら未決の特許申請に対する判定がくだされるまで待つことができれば、交付済み特許においても同様の増加傾向を示すものと推測できる。

図1 図1:明細書でLinuxに関する記述のある米国の特許数(青:交付済み特許、黄:申請中特許)

 こうした統計情報は非常に興味深いものではあるが、ここで1つ言えることは、商業分野における特定用途でのオペレーティングシステムの使用やLinuxカーネルの採用をする場合は、事前に特許データベースを調べておく方が賢明だということである。

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