ビジネスに対するITの貢献度を証明――ITサービス財務管理初心者歓迎! ITIL連載講座(2/3 ページ)

» 2007年11月19日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

ITサービス財務性管理の活動

 ITサービス財務管理の活動は、大きくわけて3つある。

1.予算管理

 ビジネスから求められているITサービスのニーズを明確化し(このアウトプットはサービスレベル管理によってもたらされる)、そのITサービスを適切に管理するために必要な予算を予測し、運用計画をたてるための活動である。具体的には、次の要素が含まれる。

  • 予算管理方法の決定
  • 予算の作成
  • 予算の確保
  • 予実管理

2.IT会計

 ITサービスの提供に必要な費用を明確化して、費用がどのように使われたかということを説明するための活動である。ITサービスのコストを顧客ごとやサービスごとなどに分類して、正確な管理情報を提供する。

3.課金

 ITサービスにかかる正当な費用が算出できると、顧客に対する課金が可能になる。課金は、ITサービスの提供に必要なコストを顧客から回収するとともに、顧客に対してITサービスに対するコスト意識を持たせるためにも効果がある。

 課金には、ITサービスに対するピークを分散させる効果も期待できる。例えばあるITサービスは月末・月初に負荷が集中し、月の中ごろはほとんど使われていないとする。そのような場合、そのITサービスに対する課金を、月末・月初は高く設定し、月の中ごろには安く設定する。いわゆる「格差課金」の方法を用いることによって、ITサービスのキャパシティを管理することも可能になる。

IT会計のキーワード

 IT会計の分野においては、コストを的確に分類・管理することが重要である。そのためのいくつかのキーワードを記しておこう。

1.原価モデル

 ITサービスに必要なコストの構造を明確化し、全体の枠組み(フレームワーク)を定めること。顧客やサービス単位で、どのようにコストを配布するのか、またはコストの積み上げを行うのか、といったことを具体的に決めていくことになる。

2.原価費目

 原価モデルを作成する際に、コストを配布する元になる分類。代表的な原価費目は次の通りである。

  • ハードウェア
  • ソフトウェア
  • 人件費
  • 収容設備(施設)
  • 業務委託費
  • 他部門からの振替(付替え)

3.原価要素

 原価費目をさらに細分化した要素。例えばハードウェアであれば、サーバ、デスクトップPC、ストレージ、ネットワーク機器などが挙げられるだろうし、収容設備であれば、サーバルームにかかる家賃、光熱費などが挙げられるだろう。

4.資産費用と運用費用

 資産費用とは、ハードウェアやソフトウェアなどの資産を購入する際に当てられる費用のことで、一般に高額になり、減価償却という形で複数年度にわたって計上することが多い。

 運用費用とは、保守費用や年払いのライセンス費用、人件費などの、IT資産を日々運用するためにかかる費用のことで、各会計年度で算出される。

5.直接費用と間接費用

 直接費用とはある特定の部門や特定のサービスのみで使われている費用のことである。あるサービス専用のサーバやアプリケーションがあるのなら、そのサーバやアプリケーションの購入費(資産費用)や運用費用は直接費用である。

 一方間接費用とは特定の部門やサービスに割り当てることのできない費用である。組織全体で利用しているインターネット接続の費用や、全サービスの全サーバが格納されている収容施設の家賃などは間接費用である。間接費用は、正当な方法で各部門やサービスに按分する必要がある。

6.固定費用と変動費用

 固定費用とは、そのITサービスをどれだけ使ったかに関わらず、持っているだけでかかる費用のことである。収容設備の家賃、サーバの保守費用、運用管理部門の人件費などは固定費用である。

 一方変更費用とは、使っただけかかる費用のことである。電話代、電気代などの光熱費、プリンターのトナーや紙の代金などは変動費用である。これらの費用の特徴を正確につかみ、適切な会計を行う必要がある。

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