2010年のモバイルサイトを考える――ホンダの事例からモバイルサイト活用術

将来も利用拡大が見込まれるモバイルインターネット。サービスのさらなる多様化も予想される。2010年にモバイルサイトの本格展開を目指すホンダの事例から、モバイルサイトのビジョン構築を考える。

» 2007年11月28日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

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 携帯電話ユーザーの拡大が頭打ちの気配を見せる一方、モバイルインターネットの世界は利用者のさらなる広がりとサービスの多様化が期待される。実際に、現行の取り組みばかりではなく、将来のビジョンを掲げてすでに活動を始めている企業もいる。

 ディーツーコミュニケーションズ主催の「MOBILE AD FORUM2008」では、2010年に向けてモバイルサイトの再構築に取り組むホンダ技研工業(ホンダ)の取り組み事例が紹介された。

渡辺春樹営業主幹

 ホンダでは、2004年にモバイルサイトの運用を始めた。PCを含む同社サイトの2006年実績は、訪問者が年間3600万人、ページビュー数は同6億8000万、メールマガジン登録数は130万人。同社日本営業本部宣伝販促部の渡辺春樹営業主幹は、「PCサイトは方向性を持って運営できるようになったが、モバイルサイトはきちんと手をつけていなかった」と話す。

ホンダのWebサイトロードマップ。最終的には顧客との長期的な関係構築を目指す

 同社では2010年にサイト全体で訪問者数5000万人、10億ページビュー、メールマガジン登録200万人が目標。このうち、モバイルサイトでは訪問者数500万人、1億ページビュー、メールマガジン登録20万人の獲得を目標としている。

 2010年を目標期限とする理由について、「モバイルインターネットの勢いを見ると、2010年にはPCとモバイルの利用者が逆転すると考えている。少なくとも2010年ごろまでにモバイルサイトの方向性を決めておく必要がある」と渡辺氏は説明する。

ある日曜日での訪問者数を経年変化で見ると、2005年を境にPCサイトの伸び率は止まったものの、モバイルサイトが増え続けている

 実際にこうした変化の兆しがすでに見えているという。ホンダの調査によれば、PCからのアクセス数は2005年を境に伸びが止まったが、携帯電話は引き続き伸びているという。さらに、PCまたは携帯電話で自動車カタログを請求したユーザーが実際に購入した割合では、両者の差に大きな開きがなく、モバイルサイトがPCサイトに匹敵する販売促進効果をすでに持ち始めていると渡辺氏はみている。

新型フィットの特設サイト訪問者数は、PCとモバイルとで明暗が分かれた

 10月には人気小型車フィットのフルモデルチェンジを発表し、PCとモバイルの2つで特設サイトを立ち上げた。両サイトでは外装や内装を紹介するコンテンツが活発に利用された。だが、新車発表日のサイト訪問者数はPCサイトが約20万人だったのに対し、モバイルサイトは1万人に満たなかった。「何が原因で異なる結果になったのか、実際の購入率も含めて検証を行いたい」と渡辺氏は述べる。

マルチデバイス環境を視野に

 将来のインターネット環境について、渡辺氏はマルチデバイスからのアクセスが拡大すると予想する。「2020年にはあらゆるデバイスがネットワークにつながり、画面の形態にはこだわらない時代が来るだろう。今は携帯電話が伸びており、ノウハウを蓄積しなければならない。2020年にはどのようなデバイスにも対応できるサイト運用を実現したい」(渡辺氏)

 モバイルサイト運営における直近のテーマは、利用シーンに応じたコンテンツの拡充だ。例えば山中で事故に遭遇した場合、携帯電話でまず知りたいのが近くにある自動車修理工場の情報。「こうした情報はニーズが高いものの、最近まで用意されてこなかった。携帯電話ならでは情報提供を考えなければならない」と渡辺氏は話す。

 このほかにも、キャリアごとに異なるモバイルサイトの運営ノウハウの蓄積や、モバイルコンテンツ技術への対応スピードも求められるという。明確になっているテーマの1つは、メールマガジンのモバイル活用だ。「PCのメールマガジンは10年以上の歴史があり、自動車購入者の購読率も高い。携帯電話とメールマガジンを関連付けて、いかに販売につなげていくのかというノウハウをしっかりと固めたい」と渡辺氏は話している。

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