NEC、携帯電話でも動く組み込み向け自動翻訳ソフトを開発

NECは、携帯電話でも動作する組み込み向け自動翻訳ソフトを開発した。携帯電話や電子辞書などへ応用が期待される。

» 2007年11月30日 17時41分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 日本電気は11月30日、携帯電話機単体でも動作する組み込み向け自動翻訳ソフトウェアを開発したと発表。約5万語の日本語に対応し、携帯電話や電子辞書などへの搭載が期待される。

 開発されたソフトウェアは、音声認識エンジンと機械翻訳エンジンで構成され、音声で入力された日本語をデバイス本体で英語に翻訳処理を行う。多くの携帯電話向けの翻訳アプリケーションは、入力された言葉をネットワークを介してサーバ側で翻訳処理するため、処理時間がかかる。だが、同ソフトウェアはオフライン環境でも動作し、入力から翻訳完了までの処理時間は2秒程度で済むという(N601i「SIMPURE」での試験結果)。

デモ機は、CPUに256MHzで動作するARM 9シリーズを搭載したN601iを使用。N601iは、最新のN905iに比べて処理性能が半分程度だというが、それでも快適に動作するとしている。日本語・中国語版も開発中とのこと。

 音声認識エンジンは、NECが独自開発したものを携帯電話の制限されたリソース環境でも動作するよう、「最小記述規準(MDL規準)」と呼ばれる音声の認識方法を最適化する技術を利用した。また、翻訳エンジンでは「語彙規則型翻訳」と呼ばれる抽象的な表現にも対応した翻訳方式を採用した。辞書データには、海外旅行で頻繁に使用される日本語表現が約5万語、日本語に対応する英語表現が約4万語を搭載。プログラム全体のデータサイズは20Mバイト程度になる。

マルチプラットフォーム対応と多彩なアプリケーション連携を想定して開発された

 ソフトウェアにはAPIも用意されており、メールソフトウェアやWebブラウザなど、デバイス内のほかのアプリケーションと連携できる仕様になっている。例えば、日本語でデバイスに話しかけると英文メールが自動的に作成されるという具合だ。2つのエンジンはモジュール化され、「デバイスやプラットフォームに依存せずに動作することを目指した」(共通基盤ソフトウェア研究所の奥村明俊研究統括マネジャー)という。将来的にはGoogleのAndroidプラットフォームでも動作が期待される。

 なお、翻訳精度は正確な測定は行っていないものの、8割程度の正確さを目指したいという。「言葉なので100%の実現は難しいが、幾つかの言葉が正確に訳せなくも文章を理解できるように努めた。コミュニケーション成立を補完できるレベルにはある」と奥村氏。

 今回の仕組みは、男性または女性による音声の認識と英語への翻訳処理に特化している。このため、日英双方向の翻訳と翻訳文を読み上げる音声合成機能までを加えた場合には、プログラムサイズが60Mバイト以上になる。「今の携帯電話はメインメモリが128Mバイト程度なので、フル機能を実装するとリソースの半分以上を占めてしまい現実的ではない。携帯電話に実装するにはサイズのコンパクト化ともにデバイス側のリソース拡大も必要なので、製品化に時間がかかりそうだ」と、服部浩明知能コミュニケーション部長は説明する。なお、電子辞書やPDAなどのデバイスでは実装のめどが立っているとしている。

笠原裕NEC中央研究所支配人

 NEC中央研究所の笠原裕支配人は、「今年はNECが『C&C(Computer and Communication、1977年に当時の小林宏治会長が提唱)』を発表して30周年。自動翻訳技術の開発に1983年から取り組んでおり、携帯電話での動作が確認できたことでC&Cコンセプトを具現化できた1つの事例」と研究成果について述べた。他社への販売などは未定ながら、「前向きに検討していきたい」(笠原氏)と話している。

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