「ASP/SaaSでも通用する」――国産パッケージの海外進出を見据えるMIJS今年2度目のMIJSカンファレンスが開催

国産業務パッケージソフトの海外進出を目指す業界団体「MIJS」のカンファレンスが今年2回目の開催を迎えた。オープニングセッションでは、海外企業の製品利用形態について興味深いリポートも明らかにされた。

» 2007年11月30日 19時50分 公開
[ITmedia]

 日本を代表するパッケージソフトウェア製品を世界に向けてプロモーションしていく業界団体「MIJS(Made In Japan Software)コンソーシアム」は11月29日、「MIJSが日本のソフトウェアビジネスを変える」というテーマを掲げ、「第2回 MIJSカンファレンス『Japan』」を開催した。

 冒頭のセッションでは、MIJSコンソーシアム理事長である松田孝裕ソフトブレーン代表取締役社長が、2006年8月の設立から15カ月経った同コンソーシアムの現況を改めて紹介するとともに、この間の活動を振り返った。

画像 「人材の採用や育成といった面でも参加企業同士が協力している」と語るMIJSコンソーシアム松田孝裕理事長

 MIJSコンソーシアムの目的には、大きく「パッケージ製品間の相互連携の実現」「日本の優秀なソフトを世界にアピールする」の2つがある。活動の中心となる会員企業は、設立当初の14社から24社に拡大した。さらに、同コンソーシアムの活動に賛同する賛助企業10社、これからの成長が見込まれるパッケージソフトのベンチャー企業が集まるアーリーステージ会員7社が新たに加わり、順調な成長ぶりを見せている。

 具体的な活動では、1000名以上の参加者を集めた今年2月の第1回カンファレンスを皮切りに、コンソーシアム内部における技術発表会、中国および英国での事務所開設、検証センターの開設など着実に成果を上げている。

 今後は、今回のカンファレンスで発表されるパッケージ連携のベースとなる「MIJS標準規格」をさらに発展させるとともに、ソフトウェアベンダーが自由に参加できるMIJSコンソーシアム版の「SaaSポータル」の立ち上げを目指すという。松田氏は最後に、「日本のソフトウェアビジネスをどう変えていくかを参加いただいた皆さんと一緒に考えていきたい」と講演を締めくくった。

依然として高いパッケージ製品の利用率

 引き続き、同コンソーシアム理事で、海外市場での調査/プロモーションを行うオーバーシーズ・オペレーション部会の部長を務める長谷川礼司アプレッソ代表取締役社長が登壇。現在進めている海外市場での調査の中間報告を行った。

画像 「MIJSは“仲良しクラブ”ではなく、必ず利益の上がるモデル作りのための団体」と強調するMIJSコンソーシアム理事兼オーバーシーズ・オペレーション部会部長の長谷川礼司氏

 「日本のパッケージ製品やエンジニアは優秀なはずなのに、あまり海外進出できておらず、国内市場でも欧米のパッケージ製品に席巻されている」(長谷川氏)という現状がある。その背景を探る目的で、総務省の支援の下、同コンソーシアムが進めているこの調査では、日本のソフトウェアベンダーが進出できる可能性の高い米/英/独/蘭の4カ国を対象としてピックアップ。現地企業と日系企業でのソフトウェア利用状況を聞いている。今回の中間報告では、4カ国の現地企業各100社、計400社に対して行ったWebアンケートの結果について発表があった。

 全体の企業がどのようなシステム形態を採用しているかを聞いたアンケートでは、パッケージ46%、ASP/SaaS 5%、自作24%と、パッケージ製品利用の比率が高いことが示された。また、MIJSコンソーシアムとしても関心の高いパッケージ製品やASP/SaaSの利用状況を適用業務ごとに分析したところ、パッケージ製品の利用が一番進んでいるのは米国の会計業務、ASP/SaaSではアメリカの営業支援、といった結果が出た。

画像 システム形態別の導入状況
画像 導入パッケージ製品のランキング

 また、具体的にどのようなパッケージ製品を利用しているかをランキングした結果も紹介され、SAPの「SAP Business Suite」、Sageの「Package」、Microsoftの「Dynamics AX」がベスト3となった。発表があった中間報告の内容は、後日MIJSコンソーシアムのサイトで公開される予定。

 一連の調査に対し、長谷川氏は個人的な見方と断った上で「国ごとに制度の異なる会計などでは、パッケージといっても国ごとにカスタマイズが発生する。ASP/SaaSがもっとも利用されている営業支援のような分野なら、世界共通のパッケージで通用する可能性が高く、日本製のパッケージも参入できるのかもしれない」と印象を述べた。日系企業も含めた最終的な調査報告書は、「来年3月をめどにまとめる予定」という。

 その後、行われた基調講演では、日本のサービス企業としていち早く海外進出を果たしたセコムの木村昌平取締役会長が「創造的破壊の経営戦略〜高生産性ビジネス創出と国際競争力」と題した基調講演を行った。成功のベースとなったセコムの経営哲学を紹介するとともに、同じサービス業であるソフトウェア業界に対して、サービスに徹すること、マーケットに迎合しないこと、そして妥協的提携・連携はするなといった提言が投げかけられた。

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