「開発者の自由な裁量こそが生産性向上のカギ」まつもと×丸山 in MIJSカンファレンス(1/2 ページ)

今年2回目の開催となるMIJSのカンファレンスでは、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏と日本のJavaエバンジェリストである丸山不二夫氏による対談形式の講演が行われた。

» 2007年12月03日 11時40分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

 国産アプリケーションソフトウェアベンダーの連携団体であるMIJS(Made In Japan Software)コンソーシアムは、11月29日に「第2回MIJSカンファレンス『Japan』」を開催。午後のメイントラックでは、日本発の軽量オブジェクト指向プログラミング言語であるRubyの生みの親で、ネットワーク応用通信研究所と楽天技術研究所の両社でフェローを務めるまつもとゆきひろ氏と、UNIXやJavaの教育で知られる稚内北星学園大学の教授で、日本Javaユーザーグループ会長の丸山不二夫氏の2人が登壇した。

 今回は丸山氏がホスト役を務め、まつもと氏とともにRuby成功の要因や、日本のソフトウェア開発者が世界で活躍するための条件について語り合った。

Rubyはコンピュータの都合を押し付けない

 1993年の開発当初から、ソースコードも含めて自由に活用できるオープンソースソフトウェアとして公開されたRubyは、コードを簡略化させる省略記法を増やしつつ、関数型言語からの影響を色濃く受けながら進化。97年ごろから、その素性の良さに注目した海外の開発者が中心となって、開発支援のコミュニティーが広がっていった。

 「なぜRubyがこれほど世界に受け入れるようになったのか」という丸山氏の問いに、まつもと氏は「高生産性、アジャイル、簡潔という3つの特性が評価されたから」と分析する。

画像 まつもと氏は「世界には日本語化されていない知見が数多くある。日本語圏に閉じこもるのはもったいない」と語る

 2004年に、Rubyを活用したWebアプリケーションフレームワークの「Ruby on Rails」が登場すると、Javaによる標準的Webアプリケーション開発の10倍の生産性があるとした“伝説”が論争を呼び、事実、簡単なアプリケーションなら15分程度で構築できるRailsの生産性は驚きをもって注目された。また、アジャイル思想にも近いRubyは、アジャイル宣言をまとめたAgile Allianceエキスパートたちからも好意的に受け入れられているという。

 さらに、「短いコードで多彩な表現ができる簡潔性にも優れている」と言うまつもと氏は、JavaとRubyそれぞれの階乗計算プログラムのコードを具体的に示し、Rubyのシンプルさを証明してみせた。

 「CやC++で感じていた、コンピュータの都合を押し付けられることへの腹立たしさがRuby開発のきっかけ」と明かすまつもと氏。自分が楽をするためなら、Rubyを作る苦労などはまったくいとわなかったという。「人間にコンピュータの都合を押し付けない簡潔さがRubyの特徴の1つ」(同氏)。

画像 「オープンソースとビジネスの関係を考えることが今後重要な鍵となる」と丸山氏

 丸山氏も「Rails 以降、Javaの世界も大きく影響を受け、『簡潔性』がトレンドになっている」と語り、その影響力を認める。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ