「開発者の自由な裁量こそが生産性向上のカギ」まつもと×丸山 in MIJSカンファレンス(2/2 ページ)

» 2007年12月03日 11時40分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]
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世界に踏み出すことが技術者としての優位性を高める

 その後、日本の開発者と企業が世界で活躍するための条件について、2人の議論が進んだ。「ITエンジニアに対し、グローバルな意識を培ってもらうにはどうしたらいいか」と課題を投げかける丸山氏に、まつもと氏は「最新のテクノロジーに触れたいなら、海外に目を向けること。世界には日本語化されていない知見が非常に多く、英語の情報から新しい情報を得ることが重要になっている。ちゅうちょせず一歩踏み出すことが、技術者としての優位性を高めるチャンス」と語り、一定の英語力の必要性を認めつつ、コミュニティーでは積極的な情報発信が評価されるとアドバイスする。

 丸山氏も「日本人の多くは、高性能なPCを所有する経済力と、世界一安価で高速なブロードバンドを利用できる環境に恵まれ、さまざまな情報が手に入りやすい環境にある。あとはそれをどれだけ生かせるかに掛かっている」と奮起を促す。

 一方、日本企業のソフトウェア開発に対して「個人を型にはめて失敗を減らそうとする傾向があるが、それではトータルの生産性は下がってしまう。スピードが求められるWebアプリケーション開発が主流になる今後は、そのやり方が通用しなくなるだろう」と危機感を訴えるまつもと氏。

 その意見に強く同意する丸山氏も、「1人の開発者が最大限能力を発揮する仕組みも、日本の企業では弱い。ソフトウェア開発者というものは自由の裁量が大きいほど生産性が上がるということに、企業は確信を持ってほしい」と指摘する。

オープンソースを支援するコストは人件費だけ

 対談の最後に、両者はソフトウェア開発企業が今後取り組む課題について意見を述べ合った。

 「オープンソースとビジネスの関係を考えることが、今後のIT業界では重要な鍵となっている」と丸山氏。その傾向は、IBMやサン・マイクロシステムズなどがオープンソースを積極的に取り込んでいく方向性が顕著に見られ、マイクロソフトさえも「IronRuby」(.NET上のRuby実行環境)で開発者を支援し始めるなど「今後、開発環境におけるオープンソース化は加速するだろう」と予言する。

画像 対談では初顔合わせとなった丸山氏(左)とまつもと氏

 同じくまつもと氏も、「オープンソースソフトウェアに、ようやく企業が関心を持つようになり、投資をするようになってきた」と言及。

 「だが、日本の企業がメインコントリビューターで支援するオープンソースソフトウェアはまだ少ない。経営者の理解もない。しかし、日本の企業がドライブして利益になるオープンソースのジャンルは必ずあるし、オープンソースを支援して世界的なブランドを構築することへの意義は大きい」と語るまつもと氏は、オープンソースを支援する主なコストは人件費だけ、世界ブランドになるための広告宣伝費を考えると微々たるものだと訴える。

 さらに丸山氏も、「サン・マイクロシステムズはJRuby開発に向け、2人のコアコミッターをフルタイムの社員として迎え入れた。そんな会社の度量が業界へ与えるインパクトは大きい」と語り、どんな企業でも第二、第三のまつもと氏を生み出す可能性があると期待する。

 そしてまつもと氏は、「日本の中で切磋琢磨(せっさたくま)された技術が時折海外に出ると、あまりに洗練されているのでみんな驚くという。そんな日本の技術力を世界に見せつけるのもおもしろいのではないか」と呼びかけ、講演を締めくくった。

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