BEAのロブ・レビーCTOが、ダイナミック・ビジネス・アプリケーションを実現する同社のプラットフォーム「Genesis」について語った。
「BEA AquaLogic Enterprise Security 3.0」「BEA WebLogic Event Server」など新たな製品群を「BEAWorld 2007 上海」で発表したBEA。同社が提唱するダイナミック・ビジネス・アプリケーションを実現するためのプラットフォーム「Genesis」について、BEA Systemsの取締役副社長と最高技術責任者(CTO)を兼任するロブ・レビー氏に話を聞いた。
―― GENESISは、どういった形でBEA製品に影響してきますか?
レビー 今後2年にわたって、すべてのBEA製品にGENESISの影響がおよぶことになります。最初の取り組みとしては、WebLogic ServerのコンテナとしてSaaSコンテナを2008年の第2四半期にリリースする予定です。SaaSの実装は、WeblogicやAqualogic、そしてmicroService Architecture(mSA)の部分にまで拡張されることになります。加えて、複数のSaaSをデプロイする要素や、J2EEとは異なる要素――SwingやPHP、Rubyなどですが――をWeblogicコンテナでサポートしていく予定です。誤解しないでいただきたいのですが、SOA 360°対応、GENESIS対応といった形で製品が登場してくるわけではありません。
―― SOA 360°とGENESISの関係は?
レビー SOA 360°は、SOAの実装に特化したもので、SOAのビジネスアプリケーションをどう構築していくかを考えたものです。一方、GENESISはダイナミック・ビジネス・アプリケーション全体をカバーする広範な視野を持ったものです。GENESISの中にはSOAもあればBPM、ソーシャルネットワーキングなども包含されるのです。SOAをユーザー領域まで拡張したといってもいいかもしれません。
―― GENESISは企業の何を変えるのですか。
レビー コンシューマー側で誕生した技術をエンタープライズに取り込んでいく際、何が問題になるかといえば、ガバナンス――どのようにコントロールを効かせていくか――にほかなりません。これを実現するには、ITの根本的な変化が必要となってきます。
今日のITガバナンスは、何かを使いたいという要求に対し、明示的にそれを許可するような仕組みであるといえます。ダイナミック・ビジネス・アプリケーションの前提は、必要なことだけを許可制で運用するという従来の方法とは逆で、ITを安全にコントロールするための一定のガバナンスやポリシーの下で、ユーザーに自由を与えようというものなのです。
インターネットでネットサーフィンしている自分を想像してください。パスワードなどで認証が必要なところ以外は自由に見られますよね。これと同じような自由をITシステムにも与えようとするアプローチがダイナミック・ビジネス・アプリケーションであり、GENESISなのです。
SOAのAはアーキテクチャ、つまり、ITアーキテクトによって考え出されたものです。しかし、SOAが真に成功するには、これをITアーキテクトだけが考える問題にせず、そこに社会的な要素を加味することで、意思疎通を促進する必要があると考えます。人をアプリケーションの中心に据えることで、これまで考えもしなかったようなアイデアが生まれるのです。
―― IT業界には昔はやった言葉を焼き直して再利用する傾向があります。ダイナミック・ビジネス・アプリケーションはそうではないのですか?
レビー IT業界で昔はやった言葉の再利用が見られる、というのには同意します(笑)。同じコンセプトの再利用というわけではありませんが、ユーザーがアプリケーションに与えるインパクトをもっと大きなものにしたいという考えは、メインフレームから分散環境に移行したときの状況に似ているところがありますね。
これまでの流れと大きく異なるのは、企業の中からではなく、コンシューマー側からの動きであることです。従来のように、技術ありきで変化が起こっているのではなく、人間関係など社会的な変化が先にあり、それに技術が追いついてきた結果の変化です。
10年前であれば、企業の中にいてこそ最新技術は体験できたのです。しかし現在、企業の外に優れたコードや楽しい技術が存在することも珍しくなくなりました。Twitterなどもそうです。企業のCIOはインスタントメッセンジャーのようなツールが生産性を阻害するものだという考えを再考する時期にきています。自宅でやっていることを会社でもできるよう、そしてそれを企業が許容してくれるようなITシステムを構築することが求められているのです。
これはSOAの再利用性とも関連してきます。すでに存在する優れたものに気づかず、再びそれをコーディングするのは不毛な行為であり不毛な時間です。コーディングするより、それを探した方が早い、ということも多々あるわけです。そのためには、1つの場所に集め、必要なものを見つけ出しやすくするといった取り組みも必要ですが、人間同士の関係性を有益なものにしていくことも志向する必要があります。
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