Sunによるソースコードの公開から1年――Javaコミュニティーの動向Focus on People(2/4 ページ)

» 2007年12月17日 00時00分 公開
[Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

変革に伴う苦しみ

 ラインホルド氏は、この1年間におけるコミュニティーの全体的な変化はごく限られたものでしかないとし、コミュニティーにはコードのオープン化に関する長年の経験やコード開発に関する高いレベルの技術があるので、その程度で収まっているのは当然であろうとしている。

 1つの例外はJavaモバイル/組み込みデバイスに携わるコミュニティーで、これは先のアナウンスが出された当日に結成されたものである。Sunのテクニカルエバンジェリストであるテレンス・バー氏は、同コミュニティーには1年間で500名の貢献者が登録され、その開発成果に注目している人間はより多数に上るとしている。「わたしどもの決断は外部にいる多くの開発者の興味を引いたようです」とバー氏は語る。「(この主の活動は)業界内のほかの分野では見られないもので、そうした出来事に貢献できたことを喜ばしく感じています」

 その一方で大幅な環境の変化に曝されることになったのが、従来のリバースエンジニアリングによるフリーなJavaの実装を目指してきた開発者たちである。これらの人々についても、Sun Contributor Agreementには同意できないなどの個人的な理由からOpenJDKへの参加を拒む者もいれば、状況の変化を積極的に受け入れようとする者などさまざまだ。このOpenJDKという暫定的な管理機構に参加した1人に、有力なフリーのJava実行環境の1つであるKaffeの主任開発者を務めるダリバー・トピック氏がいる。

 また一部でその存在意義の喪失が懸念されていたGNU Classpathは、現在も主要なJavaプロジェクトの1つとして活動を継続中であり、Sunが未公開化している部分に対する多くの代替コードおよびSunの商用Javaコードに一部置き換え可能な小型コードを提供している。

 Classpathの開発者であるMichael Koch氏の説明するところでは、古き伝統を持つClasspathのコミュニティーこそが、今ではSunにとっての最も有力な支援者であり助言者の1つとなっているとのことだ。「Sunはオープンソース関連の事柄について、Classpathの人間に多くの相談を持ちかけてきますよ」とKoch氏は語る。

 こうした環境の変化への対応を迫られているのは、Sun内部の開発者も同様である。「これはサイモン・フィリップス氏(Sunのオープンソース責任者)がよく口にしていることですが、過去にプロプライエタリ製品の開発チームを社内にて整備してきた後でオープンソース型の開発形態に移行するといった場合に、“これからは社外の開発コミュニティー育成に力を入れて、その後で適切な交流体制確立の道を模索しましょう”というのは正しいモデルではないのです」とラインホルド氏は語る。

 「正しい方向性としては、クローズド方式で活動してきた開発チームが存在している以上、それこそがオリジナルのコミュニティーであると考えるべきです。そしてこうした内部コミュニティーを拡張する際に行う必要があるのは、参加を求めてくる外部コミュニティーとの橋渡しの方法を構築して、社外で活動してきた人間に対して技術的な規格やプロセスについての標準を提示することであり、同時に開発チーム側でもオープンで透明性のある活動体制にあらためることで互いの協力を得やすくしなければなりません。要するに、既に存在しているものを有効に活用して、よりいっそうの成長を促すことです」

 この意見に同意しているのが、先のトピック氏である。「(当方で抱えている)問題の本質は、不可欠なインフラストラクチャをSunが内部に抱えていることに関連しており、これをいったん解消して、Sunおよび外部コミュニティーでJDKに携わっている双方の開発者が利用できるものに置き換えなければなりません。とは言うものの、これほど大規模なプロジェクトとなると、かなりの時間をかけないと遺漏なく行うのは無理でしょう。スイッチを1つ切り替えれば済むという話ではありませんからね」

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