Sunによるソースコードの公開から1年――Javaコミュニティーの動向Focus on People(3/4 ページ)

» 2007年12月17日 00時00分 公開
[Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

クリティカルな問題

 Javaコミュニティーが現在抱えている最大の懸念は、組織運営に関する問題である。暫定的な管理組織が正式に発足したのは、同コミュニティー立ち上げから6カ月後のJavaOneが開催されるまで待たされることになり、その後の活動はコミュニティー憲章として位置づけられる基本原則の確立に費やされてきた。この種の活動はどうしても時間の掛かる性質のものであり、それは例えば、コミュニティーへの貢献者は個人の立場で参加していると見なすのか特定のプロジェクトや企業の代表と見なすのかなどを協議に諮った上で、コミュニティーにその賛否を問わなくてはならないからだ。実際、予想以上に長期化したこの種の活動にコミュニティーメンバーの多くは不満を憶え、暫定管理組織の有効性に対する疑問の声につながっている。

 「現状においてSunは、OpenJDKにおける慈悲深い独裁者とでも言うべき立場にありますが、これまでのところ妥当な範囲内での不干渉主義も貫いています」とラインホルド氏は語る。またその性質上、コミュニティー憲章の作成は不確実さを取り払えない問題ではあるが、既に幾つかの新規サブプロジェクトが立ち上がってもおり、ラインホルド氏も「年末までには憲章の草案が完成されるかもしれないという希望を捨て去ったわけではありません」としている。

 少し視点を変えてテクニカル面での問題を考えてみると、Sunから第三者にライセンスを提供済みであったり、既得資産の著作権保護といった理由で公開できない一部コードの存在が大きな課題として立ちはだかっている。バーおよびラインホルドの両氏は、この種の理由から公開できない部分はJavaコード全体の4から5%にすぎないと推定しているが、それは25万行ものコードに相当する分量である。

 公開済みのコードはさまざまな用途をカバーする内容ではあるが、未公開コードは中枢機能を担っているものが多い。例えばIcedTeaの主任開発者を務めるトーマス・フィッツシモンズ氏へのインタビューがFedoraのプロジェクトwikiに掲載されているが、そこでの説明によると同氏の参加するプロジェクトは、フォントおよびグラフィックス用ラスターライザ、カラーやサウンドの管理、プラグインのサポートなどの機能的な欠落分を補完することを目的として設立されたものだとのことである。

 このように未公開分を埋めるための努力は各所で継続されているものの、現状で不完全であることは否めない。そしてこうした状況が、Java関係者に対して不誠実な態度であると糾弾したり約束の不履行であるという非難を呼び起こす最大の元凶となっている。実際、以前に成された約束があるにもかかわらず、1年経った現在においてもフリーソフトウェア形態におけるJavaの完全な実装は果たされないままであるのだが、その一方でSunはコミュニティーの作成したコードを自社のプロプライエタリ系コードに取り込む作業を進めており、依然として完成形態のJava実装環境の独占的な提供元としての地位を占め続けているのだ。こうした不満は理不尽なものではあるのだが、長年待たされてきたという背景をかんがみると、むげには否定しかねる批判とも言えるだろう。

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