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» 2007年12月29日 08時00分 公開

悩めるCTOの行く年来る年:オープンソースは敷居が高い?

ITベンチャー3社へのインタビューで共通しているのはオープンソースソフトウェアを積極的に活用していること。だが企業の規模が大きくなると利点も小さくなるという。その事情についてガートナーのアナリストに聞いた。

[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

 年末特集「悩めるCTOの行く年来る年」では、グリーECナビフォートラベルという3つのネットベンチャー企業を技術面で支える情報システム担当者に話を聞いた。3社に共通していたのは、初期投資を抑えるためにWebサーバやデータベースなど情報システムの基盤をオープンソースソフトウェアで構築していること。

 ネット企業のこうした取り組みをITアナリストはどう見ているか。ガートナーの堀内秀明氏と川辺謙介氏に話を聞いた。

ガートナーでアプリケーション開発担当の主席アナリストを務める川辺氏(左)とマネージングバイスプレジデントの堀内氏

ITmedia 話を聞いたネットベンチャー企業は、いずれもオープンソースソフトウェアを活用しています。オープンソースソフトウェアを利用する利点は大きいですか。また欠点などはありますか?

堀内 IT系のベンチャー企業の多くは、資本力が小さいこともあり、PHPやRubyなど無償で手に入るオープンソースソフトウェアを活用する傾向があります。会社の規模が小さいうちは無償というメリットは大きいといえます。

 しかし、社員数をはじめ会社の規模が大きくなると話は違ってきます。大企業になればなるほど、システムを運用する上で必要となる技術者数、保守の対象となるシステムの規模も大きくなります。技術者の人件費、システムを利用する社員をサポートする手間などを考えると、ライセンス費用が掛からず初期費用が抑えられるという利点は大したものではなくなってしまいます。

 IT系のベンチャー企業には、優秀な技術者がいてシステムを引っ張っていることが多いですが、ITの素養がない企業にとってはオープンソースを使ったシステム構築の敷居は高いといえます。システム構築や運用をシステムインテグレーターに委託した場合、委託コストは非常に高く、その時点でソフトウェアが無償であることなど意味がなくなってしまいます。商用ソフトには、不具合が発生した場合の対応の迅速さや製品ロードマップが明確になっていることなどのメリットもあります。企業の成長とともに、サポートなどがしっかりした商用ソフトを利用した方が結局は安くつくともいえるでしょう。

ITmedia 大手のソフトウェアベンダーがオープンソース分野に進出する例が見られます。

堀内 IBMのLotus Notes/Lotus Domino 8が統合開発環境のEclipseに準拠し、ビジネスインテリジェンス(BI)のActuateがオープンソースベースのレポーティング製品を提供しています。ベンダーは、ソフトウェアライセンスではなく、サポート費用で儲けようとしているのです。一方で、自社製品と互換性のあるオープンソースソフトウェアを使ってもらうことで、将来システムの規模が大きくなった際に自社のソフトに乗り換えてもらうという狙いもあるでしょう。

ITmedia システムの規模が大きくなった場合の選択肢として、オープンソース以外に何がありますか?

川辺 1つにはSaaS(サービスとしてのソフトウェア)が挙げられるでしょう。SaaSはハードウェアの購入が必要なく、システムのメンテナンスも自社でしなくて済むため、初期投資を抑えるという効果は大きいです。

 営業支援システムの分野では「2009年にSaaSを使ったシステムが全体の半数を超える」ともいわれています。商取引に関する情報を標準的な書式に統一して、企業間で電子的に交換するEDIなどと比べて、トランザクション当たりの売上単価が低い営業支援システムなどは、気軽に導入できるSaaSが向いています。

 日本郵政がSaaSベンダーの米Salesforce.comを採用したことは「企業による情報システム刷新のための試行錯誤の始まり」ともいえそうです。

堀内 SaaSも決して絶対的な解決策ではありません。組織が比較的小さければ初期投資を低く抑えられますが、社員が数千、数万となった場合、1ユーザー単位で課金されるSaaSは高くついてしまうからです。

ITmedia 2008年の企業のソフトウェア事情はどうなりますか

川辺 ガートナーとしては「Application Lifecycle Management」という考え方を広めようとしています。これは、企業の業務を支えるアプリケーションについて、構築して終わるものではなく、変更管理、新たに登場するビジネスモデルへの対応などを含めたライフサイクルを意識するべきであるというメッセージを含めています。

 カギを握るのは、業務も含めた幅広い知識を持って情報システムを考えるITアーキテクトの存在だと考えています。優秀なITアーキテクトを育成することが、2008年における企業の課題になります。

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