企業が必要とするERPとは?ERPで変える情報化弱体企業の未来(2/3 ページ)

» 2008年01月09日 00時30分 公開
[赤城知子(IDC Japan),ITmedia]

中堅ターゲットで復調したERP/CRMソリューション市場

 前述のIDC定義に基づいて、IDCでは毎年1月にERP、CRMソリューション市場規模を算出し、7月までに予測値のアップデートを行っている。2007年6月にIDCが発表したERP、CRMソリューションのユーザー投資額を図2に示す。2005年〜2011年における各ソリューション市場の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は、ERPソリューションが5.2%、CRMソリューションが5.3%と予測しており、いずれも2006年時点から上方修正した。

投資額 図2 ERP/CRMソリューション投資額予測、2005年〜2011年(Source:IDC Japan, June 2007)

 ERPソリューションの市場概況は、長らく低迷していた大手企業向けのERPソリューションが2005年後半より復調し、2007年以降も内部統制やコンプライアンスへの対応と、変化し続ける市場環境への追随を目指して、SOAを実装した基幹システムの導入意識が顕在化していくとIDCでは見ている。

 また、中堅企業向けの市場では2005年〜2006年に複数の国産系ERPパッケージベンダーが.NETやJavaをベースにWeb対応を強化した製品でメジャーバージョンアップを行った。中堅企業でも、基幹系システムの刷新に当たってERPの導入検討が積極的で、初期検討段階において10社前後のRFPを揃えるユーザーも少なくないという。SAPによる中堅企業向けの市場攻略が積極化するなかで、中堅企業向けのERPソリューションは競合激化の一途を辿っている。

 一方、CRMソリューション市場では、ユーザーのCRMソリューション構築手段が自社開発志向からパッケージ志向に移行し、リプレース案件、新規案件ともに積極的なパッケージソフトウェアの採用が広がっている。この動きは、ベンダーが提供するパッケージソフトウェアにオープンアーキテクチャーな技術が採用されるようになったことで、カスタマイズや他システム連携へ柔軟な対応が可能になったことに起因している。また、環境の変化に迅速に対応したいというユーザー企業のニーズからも、長い時間をかけて自社の業務にフィットしたシステムを一から構築するよりも、パッケージソフトウェアを採用する方が、短期間で安定したシステムを構築できるという認識が深まったこともCRMパッケージ活用を促進した要因である。

 パッケージの採用が進むCRMソリューションであるが、最も特筆すべき点は、セールスフォース・ドットコムの躍進である。2007年は日本郵政公社や三菱UFJ信託銀行などの大規模機関およびメガバンクが相次いでSaaS型CRMの導入に踏み切ったことで、SaaSが一躍脚光を浴びた年となった。

 IDC Japanが2007年3月に調査した「2007年 国内ITソリューションユーザー実態調査」によると、国内企業におけるERPの平均導入率は29.1%であった。しかし、ERP導入率は、企業の従業員規模によって大きな開きがあり、従業員5000人以上の超大手企業では68.0%、従業員10〜99人の中小企業では23.6%であった。一方、CRMの平均導入率は従業員5000人以上の企業では56.5%、従業員10〜99人の企業では5.7%であった。ERP、CRMともに、平均導入率を上回るのは従業員100人以上の企業であった。

図3 ERPパッケージの導入状況(Source:IDC Japan March 2007)
図4:CRMパッケージの導入状況(Source:IDC Japan March 2007)

 「2年以内に導入予定/検討」と回答している比率を見ると、ERP/CRMソリューション市場の伸びが、従業員100人以上の中堅企業へとシフトしている傾向が見てとれる。

 ERPやCRMの導入事例を見ると、大手企業ほど業務プロセスが複雑ではなく、生産品目が単一であるなどの点からERPパッケージによる業務システムの統合化メリットが活かしやすい、という点で中堅企業におけるERPの成功事例を見聞きする機会が増えている。そのような企業の多くは、海外展開を行っている、または行おうとしており、グローバル対応が求められている中堅企業である場合が多い。特に、海外進出の場合には新規の拠点となることから、過去のシステムに縛られることなく、なおかつ早期の立ち上がりが必要なことから、ERPパッケージの導入がスムーズに行くことも多いようだ。

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