NECは、1つのチップでさまざまな無線規格に対応できる「ソフトウェア無線」の新技術を開発した。
NECとNECエレクトロニクスは2月4日、プログラムを変更するだけで周波数特性を自由に変更できるアナログベースバンドLSIの新技術を開発したと発表した。さまざまな無線規格に対応した情報端末の小型化につながるという。
開発された技術は、ハードウェアの電子回路構成を変えることなく無線周波数の制御をソフトウェアで行う「ソフトウェア無線」に求められる技術の1つ。アンテナで受信したさまざま電波の中から必要な電気信号を抽出するアナログベースバンドLSIに用いられる。電気信号を抽出する際に利用するフィルタの特性をデジタル信号によって高速に変化させて可変的に制御を行う。
新技術は400k〜30MHzの周波数帯に対応しており、携帯電話や無線LAN、デジタル放送といった電波からの電気信号の抽出処理を1つのフィルタでできるようになる。従来の技術では、電気信号の種類に応じたフィルタ回路を多数用意するか、大規模なフィルタ回路が必要だった。新技術を採用したフィルタ回路を利用すれば、さまざまな無線通信に対応した情報機器の小型化や開発コストの削減が実現し、新しい無線方式にもソフトウェアの更新だけで対応できる。
NECデバイスプラットフォーム研究所の望月康則所長は、「ソフトウェア無線は、“カメレオン”のように1つのチップで複数の電波に対応できる技術で、構想自体は古くからあったものの、今回の技術が実用化への大きな弾みになる」と話す。例えばNECの最新の携帯電話端末の場合、W-CDMAやGSM、デジタル放送、GPS、Felicaなど5種類以上の電波に対応する必要があり、それぞれの電気信号処理をする数のチップを搭載しているという。今回の技術を利用すればチップの設置面積が5分の1になり、チップの開発・製造コストの削減も期待される。
ソフトウェア無線を実現するには、開発された技術以外にアンテナや周波数変換、デジタル/アナログの変換処理の部分でも新技術が必要になるという。だが、「今回の部分は一番の柱であり、そのほかの部分の技術開発のめどが立っている」と話す。NECでは3年後の実用化を目指すとしている。新技術は、米国サンフランシスコで2月3日(現地時間)から開催される半導体回路技術の国際会議「ISSCC」でも発表される。
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