必要なことはすべて「新しいOS」で――Facebookが示唆する新ビジネスNext Wave(2/2 ページ)

» 2008年04月11日 04時22分 公開
[幾留浩一郎,ITmedia]
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企業活用の現場にも予兆が

 企業の世界でもWidget活用の流れは加速しているように思う。その1つは「企業ダッシュボード」である。必要な情報や機能を、必要な分だけ必要な人にカスタマイズして提供するという機能である。利用者が自分自身で簡単にカスタマイズできる特徴があるため、例えば、ITに疎い経営層でも、重要な情報にリアルタイムでアクセスすることが可能になり、戦略的に迅速な判断ができるようになる。またビジネス環境が大きく変化しても、社内の業務を短期間で変更したり拡張したりすることも可能になると期待されている。企業向けの展開にはFacebookのような狂騒はないが、その市場規模は決して小さくはないと感じる。

 エンタープライズ分野での活用が本格化するには時間がかかると思うが、流れは止まらない。そうしたことを示す出来事が昨年起きた。

 2007年に、IBMがカナダのCognos社を50億ドルで買収し、SAPがBusiness Objects社を70億ドルで買収、OracleがHyperion社を33億ドルで買収した。Business Intelligenceはこれまでも相当規模の単体のマーケットセグメントとしては存在していたが、昨年の申し合わせたような相次ぐ買収の背景には、BIも単体で提供するのではなく、他の必要な情報とシームレスに組み合わせることができるようにする「企業ダッシュボード」のニーズの高まりがあるのではないかと思う。

 しかし、WidgetやAPIの概念自体や、その実現要素技術はFacebookが発明したものではない。従来から存在しており、かつ、まだ多くの発展が期待されているマーケットである。APIであれ、Widgetであれ、それぞれ単体ではそれ程大きなインパクトはない。実際はさまざまな技術の集合体であり、全体で発展する必要がある。そのためには概念の共有化が重要であり、それらをリードする役者が必要となる。

本流となるための課題

 ただその新しい概念が本流になるにはまだまだ解決しなければならない課題が残っている。その重要な基盤要素の1つにトラッキング機能があるのではないか。

 従来のWebアプリでは主に、提供者と利用者が1対他の関係が保たれているが、Widgetでは、提供者と利用場所、利用者が複雑に絡まる。例えば従来のWebアプリの場合、実際に利用するにはそのサイトを訪れる必要がある。そのためにDiggなどのブックマークサービスが成り立っている。

 これに対し、Widgetは利用者が提供者のサイトに行くのではなく、提供者のサービスの一部を切り出して自由にお持ち帰りできるようになっている。人から人に渡っていくと、最初の作り手や提供元でさえ自分のコンテンツやアプリがどこでどう利用されているのか全く分からないという困った状況が発生する。これはさまざまな技術の集合体がビジネスとして発展していく際に、大きな障害となる。

 これらのことから、誰でも気軽に使える基盤が必要なのではないかと感じ、米オーリック・システムズ社では昨年から汎用的なWidgetのトラッキング機能を無料開放している。また機能だけではちょっと分かりづらい点があるため、データの収集からレポーティングまでを簡単に利用できる1つのWidgetアプリの提供を行っている。当社の本業は企業向けのアクセス解析ツールやサービスを提供することであるが、ネット社会の健全な発展に少しでも貢献できればと考え、試みていることの1つの形である。

プロフィール

いくどめ・こういちろう AuriQ Systems, Inc. 社長兼CEO。リアルタイムWebアクセス解析システム「RTmetrics」をはじめとするソリューションで、企業のオンラインビジネスを支える。東京工業大学卒業後、新日本製鉄、Infogy社を経て2002年より現職。18年以上のIT産業におけるビジネス経験を持ち、現在、米国と日本を往復する毎日。


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