動きの良い「ルールの翻訳機」を――見える化実現目指すユーザー企業BI特集(2/2 ページ)

» 2008年04月18日 05時49分 公開
[小松崎毅,ITmedia]
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リアルタイムBIの未来

 最近PC用アプリケーションとして人気のあるものに、ウィジェットやガジェットと呼ばれるプログラムがある。これはデスクトップ上に置いておける小さなアプリケーションで、時計や辞書、ニュース速報などさまざまな機能を持つものが発表されている。BIのツールとして、このウィジェット的なものが求められ始めている。

 この動きはリアルタイムBIへの流れの一環だ。例えば商品が売れるたびに、デスクトップ上の売上データのグラフや在庫管理表などがリアルタイムに更新されていったりすれば、興味を引かれる情報にはなる。だがアビーム コンサルティングの中世古操氏は、ベンダーとユーザー双方から湧き上がるこの期待に若干の疑問を抱いている。

 「デスクトップを見れば現時点の状況が分かる、という点では評価される部分もあり、見える化の象徴として意味合いも大きいと思いますが、必要とされる指標はごく一部に限られているのではないでしょうか」

 例えば会社の財務情報をリアルタイムで見せる必要があるかどうか。日・週・月単位といったような区切りのよい単位で分かればよい情報は多い。経営者がリアルタイムで情報を取得し、瞬時に動向を判断して対応するといったことはまずないだろう。経営者は中長期戦略を持って会社を営んでいる。企業の意思決定という大前提をもってBIを活用するうえで、要求されている以上にシステムが進化し巨大化していくことが本来の目的を見失うことにつながらないか、という危惧があるのも事実だ。

 「完全なリアルタイム化を図るには、基幹系で取り込んだデータを瞬時に使える形式に変換して保存する仕組みが必要。パフォーマンスや処理速度、リカバリなど実装部分でも実用に耐えるものができるかどうかは未知数です」と中世古氏。

 いまのところ完全なリアルタイムBIはまだ出てきていない。ただ、数分遅れで更新されるデータをもとに迅速な対応を図るBIはある。その代表例が「ディズニーランド・パリ」に代表される「オペレーションBI」だ。ユーロディズニーSCA社では、BusinessObjectsのツールを利用して、入場者の場内での動き、アトラクションや駐車場の混雑状況などを管理し、予測値などを計算。現状との比較から適切なオペレーションを下すというシステムを導入し、成功を収めている。

人材の育成がBIを進化させる

 「BIという仕組みをどう使うか。必ずしも経営上の意思決定という枠組みに収める必要はないと思います。BIの技術を必要とする部署に当てはめて考えれば、まだまだ面白いビジネスモデルが作り出される可能性は十分にあります」と中世古氏は語る。

 もっともBIからはじき出された指標はあくまで情報でしかない。この情報をいかに活用し、企業のメリットに変えていくかはユーザー自身が判断しなければならないこと。おそらくBIは今後、リアルタイムで情報提供できるシステムにシフトしていくことは間違いない。この進化したシステムから的確な情報を読み取ることのできる人材の育成は、今後のBIを語るうえでの最重要課題の1つだと言える。

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