崩壊するICTピラミッドNGNが引き起こす業界変革シナリオ(2/3 ページ)

» 2008年04月28日 14時18分 公開
[エリック 松永,ITmedia]

ピラミッド再編成の動き

 ICT3層ピラミッドでは、より上位層がビジネスの方向性を決める力を持っている。となれば、下位層は上位層を囲い込みたいと思うわけだが、上位層にとっては下位層の商品・サービスは選択肢が多いほうが差別化になるため、なかなか相思相愛とはいかない。さらに、あくまでも印象だが、上位層はガツガツとした「肉食系」のキャラクターを持っていることが多い。むやみに下位層が手を差し伸べると食べられてしまう可能性が高い。

 かつてネットワーク層で国家を背景に莫大な力を誇った米国通信大手AT&Tが、豊富な「軍資金」を背景にICT3層ピラミッドの統合を狙った。AT&Tは、システム層の担い手である米NCRを買収し(1997年にNCRはAT&Tから独立)、コンサルティング層については、コンサルティング機能をAT&T Solutionsとして持とうとしたが、結局、失敗に終わった。AT&Tの失敗は、ネットワーク層に大きく影響し、上位層を下位層が統合することの難しさを印象付ける結果となった。

 その後、緩やかな提携で層をまたぐような動きはあったが、各層は基本的に、それぞれの層内で競争を繰り広げていった。

 しかし、テクノロジーの急速な進展により、各層での差別化が困難になり、層をまたぐ必要が出てきた。また経営的な視点から、コンピュータシステムをビジネスの中枢ととらえる企業が増え、IT投資自体が経営課題となり、経営者の判断が大きく影響するようになってきた。

 その大きなトレンドが、システム層による上位コンサルティングの統合という形になって現れた。統合は、かつてない大規模なM&Aという形で実行された。1つは、システム層によるコンサルティング層の買収、もう一つは、システム層内部での動きとして、有力ソフトウェアベンダーのBI(ビジネスインテリジャンス)ベンダーの買収という動きになり、ICT3層構造を大きく変えることになった。

ICTピラミッド再編

 システム層によるコンサルティング層への働き掛けは、当時の世界4大監査法人、いわゆるビッグ4の一角、旧PricewaterhouseCoopersをIBMが買収した2002年に始まった。その後、NECによるABeam Consultingとの100%子会社化をにらんだ戦略的業務提携(2004年)、NTTデータによる日本キャップジェミニ買収(現ザカティーコンサルティング、2005年)と強大なマネーパワーによる大規模な統合が連続した。

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