サービス案件情報を一元管理して「提案の幅」広げる事例 情報システムサポート企業のFSM(2/2 ページ)

» 2008年05月02日 10時01分 公開
[ITmedia]
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パッケージの活用で開発期間を大幅短縮

 従来の情報システムには同社が20年来、蓄積してきた業務ノウハウが投影されている。それを継承するには、一からスクラッチで作り直すという選択肢もあったが、スピードを重視してパッケージの活用を決定。オラクルのE-Business Suite CRM Field Serviceモジュールをベースに、自社のノウハウをアドオンする形で開発した。情報システム技術本部事業システム部部長の岩居亨氏は、パッケージ活用のメリットを次のように明かす。

 「既存システムを新たに作り直すと5Mステップが必要でしたが、今回、かなりの部分にパッケージを適用できて、アドオンした部分は1.6Mステップで済みました。開発も2年で完了。スクラッチなら、倍の4年は要していたはずです」

日立電子サービス 情報システム技術本部 事業システム部 部長 岩居亨氏

 新しいFSMシステムは、06年12月に、まず横浜支社で展開。07年6月には全社展開に踏み切った。

 新システムにより、例えば従来は障害対応時のみ可能だった携帯電話からの報告を全フィールド作業に広げるなど、最適なリソースマネジメントで業務を効率化。スケジュールや作業の確認・報告に要する時間は、年間約30万時間削減される見通しだ。

 また契約情報や納入情報、障害履歴、作業履歴などを統合データベースで管理することで、サービス案件情報の一元化を実現。事業領域を横断する情報共有環境の整備が進んだことにより、課題だった提案力も「次のCSサーベイで、前進した結果が現れるのではないか」(萩原氏)と期待を寄せている。

 このように大きな効果が予想されるFSMシステム構築だが、実はまだフェーズ1が完了したに過ぎない。フェーズ1では、各サービスの業務プロセスのうち共通部分を統合してフィールド作業の最適化を実現したが、来年度からフェーズ2として、より顧客側に近い各サービスのフロント部分の開発に取り掛かる予定だ。

 「フロントは売り上げに直結するため、弊社の独自性を発揮しなければいけない部分。現在は業務の戦略を含めて、いろいろと検討している段階です」(岩居氏)

 フェーズ2が完成したとき、同社の統合サポートサービスがどのようにパワーアップしているのか、非常に楽しみである。

フィールドサービスマネジメントシステム(FSM)の概要

導入効果を聞く フィールド作業情報を統合して顧客満足度を高める

ITmedia FSMとは?

萩原 FSMとは、サービスやメンテナンスなどフィールド作業に関わる人やコスト、部材、情報を管理して全体の最適化を図り、顧客満足度を高めるとともに企業の収益性を向上させる手法です。日本ではまだなじみが薄いですが、弊社がシステム刷新を決めた当時、グローバルではすでに200〜300のパッケージがありました。

ITmedia パッケージの選定理由は?

岩居 弊社の業務をカバーしているパッケージは当時3つあり、中でも将来の拡張性と高いサポート力に期待して、オラクルのE-Business Suite CRM Field Serviceモジュールの採用を決めました。

ITmedia ユーザーの反応は?

岩居 最初に展開したのは横浜支社です。電車で移動する都心部と、サービスカーで移動する地方のフィールド作業の両方を展開している支社なので、テスト的な稼働には最適でした。導入後はユーザーからいろいろな要望が殺到したため、優先順位の高いものから対応。ある程度、目途が立ったところで、首都圏以外の支社、そして首都圏というように順次、展開していきました。

ITmedia 今後の展開は?

萩原 現在はフェーズ1が完了したところ。来年度からは、更なる統合サポートサービスの進化を目的に各サービスの商品力強化をサポートする仕掛け、お客様接点力の強化などを中心に開発を進めていく予定です。

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