クジラ飛行机――「なでしこ」に込められた鷹の勇気と蛇の知恵New Generation Chronicle(1/6 ページ)

クジラ飛行机というハンドルネームの奥には、古い思考パターンを捨て、新たな世界を開かんとする人間の姿があった。日本語プログラミング言語「なでしこ」の開発者、酒徳峰章氏の世界に迫る。

» 2008年05月27日 00時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
「New Generation Chronicle:バイナリアンスレッド」これまでの登場人物

 アインシュタインはこういう――「わたしたちが直面する重要な問題は、それを作ったときと同じ考え方のレベルで解決することはできない」。ITの重要な問題の多くは、極言すればコードで解決できるか否かである。プログラミングの未来について思いをはせ、古い思考パターンにはまらない新しいアイデアでもって問題を解決していこうとする人物がいる――多くの人があればいいなと一度は考えた日本語プログラミング言語「なでしこ」の開発者として知られるクジラ飛行机こと酒徳峰章氏その人である。IPA未踏ユースでなでしこを、IPA未踏ではWeb開発環境「葵」の開発を手掛け、IPAのスーパークリエイターにも認定された酒徳氏。「わたしはハッカーというよりは、コツコツとやり続けてきただけ」と話す彼に「New Generation Chronicle:バイナリアンスレッド」を継承いただいた。

クジラ飛行机こと酒徳峰章氏。「CUIも好きですが、GUIとCUIの中間が好き」と話す彼の頭の中にはどんな世界が広がっているのだろうか

びっくり技術で2年は食える? Web2.0で大喜利

―― 現在の仕事に就くまでの簡単な経歴を教えてください

学生時代から作曲とプログラミングが好きでいろいろなソフトウェアを開発していました。その後、不動産関連会社でのSEを経て、フリーになり、IPA未踏での開発を経て、現在はウノウに参画しています。これまでの代表作としては、テキスト音楽「サクラ」、日本語プログラミング言語「なでしこ」などを挙げておきます。

―― ネット上ではどんな名前で通していますか? その由来は?

大学生のころからもう10年くらい「クジラ飛行机(ひこうづくえ)」という名前で通しています。当時、上海にいたのですが、パフォーマンスが過激なあるロックバンドのライブを目にし、とても衝撃を受けました。そのとき、「クジラ」「飛行機」「机」がバッと連想されたのです。長く使っているので、検索すると学生時代に投稿したオリジナル曲とか出てきて恥ずかしいです。

―― 座右の銘は何ですか?

「何事も楽しんでやる」です。少しくらい面倒で嫌だなぁと思うことでもゲーム感覚で乗り切れたら、人生楽しめますよね。

―― 現在、ブラウザ、メーラー、テキストエディタはそれぞれどんなものを使っていますか?

ブラウザはFirefoxがメインです。プラグインは定番のものばかりでFirebugなどを入れてます。テキストエディタには、Terapadか自作のエディタを使ってます。メーラーは、去年、Macに移行しようと思ったときにGMailに乗り換えました。今はWindowsに戻ってしまいましたがGMailは便利なのでそのまま使っています。

―― 開発環境はどんなものを使っていますか?

道具は自作するのが好きなので、PHP/ActionScript/なでしこなど、よく使う言語については、それぞれ自作のエディタを作って使ってます。入力補完に加えて、自分しか使わない変な機能をいろいろつけています。これらはDelphiで作っているのですが、既存のエディタ設定をカスタマイズするよりも、断然自由度が高いので自作は止められません。

―― 開発の3種の神器を挙げるとしたら何ですか?

以下の3つのツールです。

  • 日本語プログラミング言語「なでしこ」
  • Borland Delphi 7
  • Webブラウザ

 手前味噌で申し訳ないのですが、なでしこは自分が必要なので開発したという経緯もあり、作業に必須のツールとなっています。去年、Mac Bookを買ったので、Macに環境を移そうと思ったのですが、なでしこがないので非常に不便に感じ、Windowsに戻ってしまいました(Mac版のなでしこが完成したら移行できるかな?)。

 Delphiはなでしこを作るのに必要なので使っています。いまではDelphi 2007などもリリースされおり、一応それらも持ってはいるのですが、バージョン7は動作が軽快で完成度が高いので、いまでもこのバージョンを使っています。逆に言えば、Borland Delphi 7以降に追加された機能の多くは要らないかなと(笑)。

 Webブラウザは、メールを見たり開発の進ちょく管理をしたり原稿を書いたりと、最近は何でもWebベースなので開発になくてはならいものです。

―― 今の自分が形成される上で最も影響があったと思う出来事は?

自作ソフトウェア「サクラ」や「なでしこ」をWebで公開したことでしょうか。ソフトウェアを公開することで、それを使ってくれる人や協力してくれる人が出てきて、みんなで一緒にソフトウェアを育てていくという流れができます。個人で作っているソフトウェアは、公開しただけで終わってしまうことも多いですが、自分が作ったものを誰かが評価してくれて、それがうれしくて、もっと作りこんで公開するという繰り返しが何にも変えられないもので、今の人生にプラスになっているように思います。何かをやり続ける上でモチベーションというのはかなり重要です。楽しくなければ続けられません。

―― はじめてPCに触れたのはいつごろですか? また、そのときのマシンは何でしたか?

中学1年生のときに新聞配達をして買ったMSX2+です。その後、MSX turbo Rが出て、MIDIが使えたので、MSXでたくさん曲を作りました。

―― Web2.0という言葉をどう定義していますか?

大喜利と思って挑戦してみました。

  • W(技を披露)
  • E(影響力ある)
  • B(びっくり技術で)
  • 2.0(2年は食える)

これでは笑点に出られそうにありませんね(笑)。Web2.0になってからブラウザをよく使うようになって、どのPCからでもお気に入りのアプリケーションが使えるのが便利です。ただ、ネットがつながらないところに行ってしまったら何も作業ができなくなってしまうのが難点です。

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