パッケージを選択する理由は何?――OSSサポーター発掘のススメ闘うマネジャー(2/2 ページ)

» 2008年06月05日 14時44分 公開
[ITmedia]
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カスタマイズに傾注すればパッケージも「一品物」

 どうも日本人というのは、ワープロや表計算ならそのまま受け入れられるが、業務システムとなると「どうせ費用をかけるなら、こうしたい。今までこうしてきたから」とカスタマイズに向かう傾向が極めて強い。結果、パーケージではなく「パッケージをベースにしただけの一品物」を作ることになる。そんなことは百も承知と挑んだ人も、気がついたら「動かないコンピュータ」の仲間入りだ。

 最近、その象徴と言えそうな事件があった。スルガ銀行が、日本IBMに対し111億700万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたのだ。勘定系パッケージに対し、今までの仕事の手順を重視したスルガ銀行と、パッケージに可能な限り合せるよう求めたIBMとの間で折り合いがつかなかったための訴訟のようだ。システムに合わせろとベンダーは平気で言うが、日常の仕事の手順は組織文化の一端であり、変えろと言われて、はいそうですかと変えられるものではない。発注者側が今までの手順の悪しき部分に気づき、新たな手順に大きなメリット見いださない限り変えられない。

 結局のところパッケージの魅力は「短時間で構築できる」ことしかない。ただし、「カスタマイズをしなければ」という枕詞が必ず付いていることを忘れない方がいい。

 筆者は以上のようなことから、「業務を知っている発注側が設計を行い、OSSを用いてシステムを構築する」ということを基本戦略とした。ビジネスの世界は利潤追求をのための競争社会であるが、行政は税金で賄われていることもあり、時間が多少かかっても最終的に安くなった方がいいという世界だ。まさに「地方自治体に金はない、残されているのは時間だけ」という状況なのだ。

 ところで筆者が一切パッケージを使わないかというと、そうでもない。施設予約システムではパッケージを用いた。理由は時間が欲しかったからである。電子決裁や内部庶務事務など組織文化に根ざしたシステムの開発では、上記の基本戦略を頑張って進める価値があるが、施設予約は組織文化というほどでもない。県民の方々の利便性を考えれば早いうちに着手すべきシステムだ。パッケージを用いて「時間を稼ごう」と決断した。ただ、県庁内部の電子化が落ち着いてきた現在、施設予約システムを再開発することにした。基本戦略通りに実施するということになる。

プロフィール

しまむら・ひでよ 1963年3月生まれ。長崎県総務部理事(情報政策担当)。大手建設会社、民間シンクタンクSE職を経て2001年より現職。県CIOとして「県庁IT調達コストの低減」「地元SI企業の活性化」「県職員のITスキル向上」を知事から命じられ、日々奮闘中。オープンソースを活用した電子決裁システムなどを開発。これを無償公開し、他県からの引き合いも増えている。「やって見せて、納得させる」をマネジメントの基本と考える。


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