富士通研、紙文書の暗号化と復号化ができる新技術を開発情報漏えいリスクの軽減に期待? 

富士通研究所は、印刷物の機密情報を暗号化/復号化できる新技術を開発した。閲覧権限に応じて復号化を制限する機能も持つ。

» 2008年06月10日 13時26分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 富士通研究所は6月10日、電子文書と紙文書の機密情報を暗号化および復号化できる新技術を開発したと発表した。紙文書による情報漏えい事故のリスクを減らせるという。

紙文書を暗号化、復号化するイメージ。読み取りに使うスキャナ、FAXは汎用製品を利用できるという

 新技術は、電子化した文書データの全領域または任意の領域を暗号化して紙文書として出力できる。暗号化した紙文書をスキャナで読み取って専用のソフトウェアで復号もできる。暗号化する領域ごとにアクセス権限を設定できるようにもなっており、1つの文書でも閲覧者の権限に応じて復号できる領域を指定できるようになる。

暗号化した紙文書。閲覧権限に応じて、「すべての情報」「属性情報のみ」「回答内容のみ」といった指定ができる。復号する際に管理サーバから権限に応じた復号鍵が必要

 暗号化する際は、指定領域を画像データとして独自のアルゴリズムで処理する。画像劣化にも強く、JPEG形式で30%程度までの劣化に耐えるほか、FAXの解像度でも復号できるという。具体的な方法は非公開だが、同社によれば「領域内をピースに分けることで暗号化強度を変えられる」としている。なお、暗号化領域が一部でも欠けると復号化できないという。

 開発に携わった伊藤隆主席研究員は「紙とデータを同一技術で保護することを目指した」と説明した。富士通研究所では、アクセス権限監視システムと組み合わせた試験運用を6月中にも開始する計画で、運用方法についてさらに研究を進めるとしている。2008年度中にもPFUが中堅・中小企業向けに製品化とSDKの提供を計画するほか、富士通でもFAXや複合機への組み込みと、情報セキュリティソリューションとしての展開を検討している。

 画像・バイオメトリクス研究センター長の松田喜一フェローは「従来から取り組んできた電子透かしや画像認識などの要素技術を応用し、1年程度で開発に成功した。情報漏えいに配慮しつつ、ドキュメントを積極的に利用していくものになってほしい」と話した。

過去のニュース一覧はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ