もう1つ、高澤氏がBIの現場活用の象徴的なケースとしてあげてくれたのは、あるメーカーの話だ。同社は製造販売をグローバルに展開しているが、新商品の企画はアジアでやり、部品は世界中から調達して、組み立ては中国で行い、欧米市場での販売は販社が担当するというように、サプライチェーンが非常に長く、情報が点在して見えにくくなっていることが課題になっていた。
「ERPをワールドワイドで統一しましたが、それだけではモノの所在は可視化されても、数字は依然として見えづらいという状況がありました。これはグローバル展開するメーカーに共通の課題です。そこでBIで解決を図るわけですが、そのメーカー様が印象的だったのは、どこの現場でも共通の認識で情報活用できるベースを作るため、まず用語の定義から取り組み始めたことでした」
例えば品質1つとっても、工場でいう良い品質と、販社でいう良い品質は意味合いにズレがあるかもしれない。そのまま各現場の情報を集めて分析をしても、正しいアクションにつながらない恐れがある。そこでシステムを入れる前に、まず用語の定義をグローバルで統一して、情報活用の土台を整えたのだ。
両社の事例から見えてくるのは、企業の戦略を織り込んだうえで共通の基盤を提供することの重要さだ。現場での情報活用といっても、ユーザー個人や各現場にすべてを任せるのではなく、企業として統一された見解のもとに、それぞれの現場のニーズに合った見せ方や手段で情報を活用する。それがいま求められているBIの姿だ。
「90年代から2000年初めまでのBIは、特定の部門の特定のユーザーが自分のためだけに使う、単なるツールでしかありませんでした。ところが、いまやBIはツールからシステムへと進化しています。システムであるからには、ユーザーに共通の理解を担保しないといけない。別の言い方をするなら、BIの提供とは、情報活用のプラットフォームを提供するという意味にほかなりません」
情報活用のプラットフォームを提供するという点では、コグノスにとってもIBMによる買収は大きな意味を持つ。高澤氏は、今後の展望について次のように語る。
「IBMとの統合で、バックエンドの情報統合が強化されるのは間違いない。私たちとしても、お客様に非常に強力かつ堅牢な基盤を提供できるのではないかと期待しています」
これは、コグノスが持つ優れたインタフェースを取り込むことでIODの完成を目指すIBMの思惑とも一致する。IBMとコグノスの統合は、ユーザーにとっても、まさしく理想的な組み合わせだったといえるだろう。
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