Yahoo!の検索事業の将来性に疑問を投げ掛けるGoogleとの提携危険な火遊びか(1/2 ページ)

Yahoo!のネットワーク上でGoogleが広告を掲載できるようにするという提携は、検索ビジネスの成長を目指したYahoo!の戦略にマイナスとなる恐れがある。

» 2008年06月16日 19時46分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Googleのエリック・シュミットCEOは6月12日に結ばれた提携について、「Googleのコンテンツ連動・ターゲット型広告がYahoo!のサイトに表示されることで、Yahoo!のユーザー、広告主およびパブリッシャーの全員が恩恵を受ける」と語った。

 これはYahoo!にとって好意的な解釈だが、果たしてその通りなのだろうか。アナリストらによると、Yahoo!は危険な火遊びをしているという。この提携は、Yahoo!の広告主とパブリッシャーを横取りするチャンスをGoogleに与えるからだ。

 GoogleとYahoo!の6月12日の提携の骨子は次の通りだ――Yahoo!は自社サイト上の検索クエリーのどれにYahoo!の広告またはGoogleの広告を表示するかを決め、また、Yahoo!とGoogleの広告のどちらをYahoo!のアフィリエイトネットワークに表示させるかをコントロールする。

 広告主はGoogleに直接支払う。Googleは協定TAC(トラフィック取得コスト)レートに基づいてYahoo!に支払う。TACレートは明らかにされていない。Citi Investment Researchのアナリスト、マーク・マハニー氏は6月13日付のメモで、「GoogleはTACの85%をYahoo!に与える。これはYahoo!にとって、契約後の1年間で2億5000万〜4億5000万ドルの現金収入につながる」と述べている。

 つまり、Yahoo!にとっては金儲けになるわけだ。しかしこの提携は、検索分野でのYahoo!の市場シェアとマインドシェアを弱める一方で、Googleが収益を増加させ、同社が大成功を収めている文字広告ビジネスをさらに拡大するのに貢献する可能性がある、というのがアナリストらの見方だ。

 Forrester Researchのアナリスト、シャー・バンボスカーク氏によると、この提携ではYahoo!よりもGoogleの方がずっと得をしたという。Googleが最大のライバルの資産から金を得る機会を手に入れたからだ。

 「Yahoo!はこの提携で収益を確保すると言っており、たぶんその通りになるだろう。彼らがこれまでアクセスできなかった広告主とのつながりができるからだ。しかし、これが同社のコアビジネスである検索事業を成長させる方法だとは思えない」とバンボスカーク氏はeWEEKの取材で語った。

 「わたしの見るところでは、これは支配権をライバルに譲り渡す提携だ。Yahoo!にとってはプラスにならないだろう。彼らがコアコンピンテンシーを発揮する能力を脅かすことにもなりかねない。彼らは検索が得意分野ではないのだろうか」(同氏)

 Citiのマハニー氏によると、Yahoo!と同社のパブリッシャーはGoogleの広告主のロングテールから収益を確保できるだろうが、Yahoo!検索の広告主とパブリッシャーの一部がYahoo!を見捨て、Googleと手を組む可能性があるという。

 経営立て直しを図っているYahoo!にとっては、Googleとの提携による現金収入の増加は歓迎すべきものであることは確かだが、この提携が検索市場での返り咲きを目指して進むYahoo!を後押しするものとなるかどうかは不明だ。

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