大地震が発生! その時、管理者(あなた)は……?良い管理者 悪い管理者 普通の管理者(1/6 ページ)

災害対策――このキーワードを意識したことがないシステム管理者は少ないだろう。しかし実際には、備えが後手に回ってはいないか? 「良い・悪い・普通」のケースで、ベストな対応を考えてみよう。

» 2008年06月30日 08時00分 公開
[木村尚義,ITmedia]

「備えよ、常に」これは、ボーイスカウトの言葉である

 神田正男は、中堅オフィスサプライメーカーA社のシステム管理者である。A社には東京本社、大阪支店、札幌営業所、福岡営業所の4事業所があり、250人あまりの社員が勤務している。供給している商品は国内と海外で生産している。

 神田は3年半ほど前にA社のIT管理者となった。今まで、業務拡張に伴いシステム拡張に奔走してきたが、ようやく落ち着いてきたところだ。これまでは、業務にシステムを追従させるのに必死で、耐障害性の取り組みはあまり重要視していなかった。

 だが、2004年の暮れから2005年の年初にかけて、国内外でさまざまな災害があったため、このまま何の対策もせずに、ずるずると運用するのは良くないと考えていた。

 そんなある日。給料日近くの夏の日の午前11時45分。東京に大地震が襲った。震度8の規模で、関東大震災から実に80数年ぶりの大災害となった。

 インターネット自体は、複数の経路により通信が途絶することはなかった。そもそもインターネットは、その前身のネットワークであるARPA NET(アーパネット)のころから耐災害性に強いネットワークである。ARPA NETは冷戦時代、核兵器による被害により通信が途絶しないように考慮された仕組みだからだ。

 建物の多くは、阪神淡路大震災の後に作られたか、補強されてはいたものの、そんな新しい建物とは言え、数日にわたる停電により、多くの企業は重大な危機に直面していた。

 自家発電で切り抜けようとする企業もあったが、例年にない猛暑であり、システム維持の電力が最優先にされたため、空調がほとんど機能しなかった。せっかく生き残ったサーバシステムが、いつ熱のためにダウンするか分からない。

 たくさんの企業が被災したが、管理者の耐障害性の取り組みによって、復旧時に大きな差が出たようだ。

 折しも、25日は給料日である。被災した社員にとって、遅延せず給与が振り込まれていることは、何よりの励みになるだろう。そのためには、社員の給与データを19日の時点で銀行に通知しなければならない。

 被災したとはいえ、A社の商品は市場競争力があり絶え間なく受注がある。工場および流通センターは日本各地に分散されており、供給がストップされる恐れはない。多少は交通の混乱があるだろうが、損害は間もなく取り戻せるだろう。

 しかし、データセンターの受注サーバが停止してしまうと、そうはいかない。

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