まずはPCの各構成要素の表面温度を単体で測定し、それぞれの部分がどのように発熱するのかを見てみよう。測定ターゲットはマザーボード、メモリ、HDD、DVD±RWドライブで、HDDとDVD±RWドライブについてはケースから取り出し、机の上に置いた状態でPCと接続して稼働させ温度変化を測定した。マザーボードについてはケースにネジ留めした状態で、ケースのふたはすべて開放して測定を行っている。また、メモリに負荷をかける実験ではスタンドアロンで動作するメモリ試験ソフトウェアであるmemtest86を使用した。memtest86はさまざまなパターンのメモリアクセスを行ってメモリに負荷をかけることで、メモリにエラーがないかを調べるものだ。
なお、以下の測定結果では結果が分かりやすいよう、測定対象ごとに熱画像の測定レンジを変えてある点に注意して結果を見ていただきたい。
マザーボード全体の温度はおおむね33〜42℃前後で、とくに一部の素子が大きく発熱している。この大きく発熱している素子はパワートランジスタと呼ばれるもので、電源から供給される不安定な電力を安定した電力へと変換するものだ。
パワートランジスタは入力された電圧に負荷をかけることで、入力電圧を必要とする電圧まで降圧させて安定した出力を取り出している。そのような構造上、この素子からの発熱は避けられない上、大電力を取り出すためにはより大きな発熱が発生する。マザーボードの発熱要因は、ほぼすべてこのパワートランジスタだと思ってよいだろう。
また、メモリに負荷をかけた場合、メモリ本体にかなりの温度上昇が見られるほか、マザーボード上、メモリスロットに隣接して設置されている抵抗器と呼ばれる素子からも大きな発熱が見られる。
アイドル状態のHDD表面温度は32℃前後なのに対し、アクセス時は40℃以上にまで発熱している。とくに側面部分や、上面のシールが貼られている部分は熱が逃げにくいようで、より高温となっている。
この結果から、HDDについてはとくにアクセスを行わずともある程度の熱が発生し、またHDDへのアクセスを繰り返すとより発熱が大きくなることが分かる。
このDVD±RWドライブは前面以外、放熱効果の高いアルミで覆われているため、表面温度はどちらの場合でも意外に低くなっている。ただし、内部的には表面よりもだいぶ熱くなっているようだ。また、書き込み時はとくに大きく熱を発するようで、ドライブに貼られたシール部分などが熱くなっていた。
また、ドライブの内部については直接の温度測定ができないものの、作業完了直後のディスクトレイやフロントベゼルの温度から、ドライブ内部は外面よりもかなり温度が高くなっていると予測できる。
次回は、実運用時と同じように、PCケース内に各パーツを組み込んだ状態で作業を行い、そのときの温度変化を測定してみることにする。
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