中堅中小企業の経営基盤改革術

工事進行基準の変更間近――建設業C社のERP改革中堅中小企業の経営基盤改革術(3/3 ページ)

» 2008年07月29日 08時00分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]
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得られた効果

 このようにERPを導入したことによってC社では以下のような効果がもたらされた。

  • 効果1:迅速かつ柔軟な経理処理

 データ管理を案件単位かつ日単位という小さな粒度にしたことによって、進行基準会計はもちろん、今後の法制度の変化にも比較的小規模なシステム変更で対処できる基盤が整った。

  • 効果2:検索可能な案件情報や申請/承認情報

 過去の案件情報や申請/承認情報を検索できるようになり、施工時の原価計算や資材調達時の発注申請も過去データを基に迅速かつ正確にできるようにした。今後C社では過去データをテンプレート化し、類似案件の場合には入力値をあらかじめ自動入力するといった機能の追加も検討している。

  • 効果3:Web化による手入力の排除と情報共有

 ブラウザを通じて各拠点から直接データ入力を行うことによって、それまでのFAXからの再入力作業による弊害(月次集計データの算出に時間が掛かる、データ入力ミスが生じるなど)を排除できた。Web化による効果はそれだけではない。孤立していた各支店や各施工現場が他拠点の情報を参照できるようになった。ある支店で資材不足が発生した時にほかの支店の余剰資材で肩代わりするといった支店の枠を越えた最適化への努力も現場から自然に発生し始めた。

 C社は、全国展開の5支店という足かせとなっていた分散環境を強みに変え、資材価格の高騰や法制度の改訂といった環境変化にも耐え得る経営基盤を構築できた。

C社の成功を分析してみると、次のような点がその要因であったことがわかる

C社のERP導入によって得られた効果

 C社の成功を分析してみると、以下のような要因が分かる。

  • 成功要因1:Webを利用した拠点間情報共有

 全国を対象とするC社のような建設業の場合は拠点が分散しやすい。そのため、システムをウェブ化して各拠点からはブラウザのみで利用可能な状態を作ることが効果的である。C社の場合は単に施工現場と支店、支店と本社といった末端と中枢との間の情報共有だけでなく、各支店にも情報を開示して支店間の情報共有を行ったことがポイントである。

  • 成功要因2:情報系アプリケーションの活用

 グループウェアやワークフローにはユーザーインタフェースが洗練された製品が多い。それらをERPと連携させることで、ERP導入の障害となりやすい「ユーザーにとって使い勝手が悪いために利用されなくなってしまう」といった問題を回避している。特に日報系の入力や申請/承認型のフローなどはユーザーインタフェースが複雑になるため、カスタム開発をすると使い勝手の悪いものになってしまいやすい。自社のニーズに合っており、かつ導入予定のERPと連携可能なものを選ぶことが賢明といえるだろう。

  • 成功要因3:ERPのWeb対応とライセンス体系

 見落としがちな点であるが、ERPのライセンス体系も重要なポイントである。実はC社が今回選定したERPは標準でWeb対応していた。Web対応をうたっているものの中には、別途Web化のためのミドルウェアが必要なものもあるので注意が必要だ。また、ERPが稼働しているオフィスとは異なる他拠点からのアクセスに別途チャージが加算されたり、取引先など社外からの利用に別途ライセンス費用が必要になったりするケースもある。C社の場合には将来的に資材調達先も含めたサプライチェーン構築も計画しているため、社外からの利用の際にも「ASPライセンス」という形で負担の少ない金額で対応できるERPを選定した。このようにWeb化や社外からの利用といった展開も踏まえて、ライセンス体系を事前にしっかりと把握しておくことが大切である。

 次回も引き続き、ERP導入のケーススタディについてみていくことにする。

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