中堅中小企業の経営基盤改革術

工事進行基準の変更間近――建設業C社のERP改革中堅中小企業の経営基盤改革術(1/3 ページ)

建設業者は資材価格の高騰、公共工事の減少といった厳しい環境下にある。2009年4月には会計基準が工事進行基準へと変更される。生き残りのために経営努力が要求される。

» 2008年07月29日 08時00分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

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 引き続き実際の導入事例のエッセンスを集めたケーススタディを紹介していく。今回は中堅建築業C社を取り上げる。現在、建設業者は資材価格の高騰、公共工事の減少といった厳しい環境下にある。さらに2009年4月には会計基準が工事進行基準へと変更される。生き残りのために抜本的な経営努力が要求される局面にある。C社はいかに体質強化を図ったのか。

 C社は、大手通信事業者や官公庁からの依頼を受けて土木/建築工事の施工を実施する。年商は350億円、従業員数は1300人だ。

ERP導入前の状況

 C社は創業者の強い牽引力で順調に獲得案件数を伸ばし、現在は全国に5支店を持つ中堅建設業者へと成長した。急速な成長に情報システムの整備が追いつかず、創業期に導入したオフコンベースの経理システムも業務の実情に合わなくなった。昨今の厳しい経営環境の中で業績を伸ばすには、情報システムの整備が不可欠と経営陣は判断した。C社が抱えていた課題は以下だった。

  • 課題1:施工現場、支店、本社の間のやり取りがFAXで行われている

 施工現場からは工事日報(作業進捗、稼働時間などの情報)が毎日FAXで支店に送られており、各支店ではそれらのデータを独自の方法で管理していた。大半は担当者が自分でExcelシートを作成して月次で管理していた。本社へデータを送る際は各支店担当者が本社向けの一覧表フォーマットに従ってデータを印刷し、FAXで送っていた。本社はそれを基に手作業でオフコンへのデータ入力を行っていた。

 このように施工現場と支店の間、支店と本社の間のそれぞれでFAXとして受け取ったデータを入力し直すという作業が発生していた。入力ミスが発生するリスクはもちろん、タイムリーな情報収集もできない。この二重入力の手間が原因となり、すべての施工現場からのデータが本社のオフコンにそろうまでに平均で10日以上の日数を要していた。このままでは進行基準会計に必要となる迅速な原価計算に支障をきたすことが明白であった。

  • 課題2:過去の案件情報や申請/承認情報を検索できない

 独自システムとして開発されたオフコンベースの経理システムは全施工現場、全支店の売り上げ、原価データを集計して月次報告を出力するように作られていた。だが、個々の案件単位の収支状況を保持していないため、過去にどのような案件があったかという情報を検索することができなかった。従って、施工計画を立てる際に基準となる原価単位(特定単位の施工作業を行うのに必要となる原価)に関するデータを蓄積できず、原価計算は現場担当者の勘と経験に基づくものとなってしまっていた。

 また社内の各種申請/承認業務もFAXで行っているため、過去の申請/承認履歴を検索することができず、発注業務における先例を確認する際に多大な時間と労力を要していた。

  • 課題3:オフコンと追加システムが不完全な形で並存している

 本社では比較的大規模な案件が多く、それらは月次の収支状況にも大きく影響する。そこで本社営業担当が直接受注情報を入力できるようにWindowsベースの案件入力システムが追加で開発された。しかし、Windowsベースのシステムとオフコンの2カ所に受注情報が蓄積されることになり、月次の集計処理の直前にWindows側に蓄積されたデータが変更されることによってデータ不整合が生じるなど、データの重複管理による問題が顕在化してきていた。

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