夏休みには「人脈」について考えてみよう職場活性化術講座(2/2 ページ)

» 2008年08月07日 11時11分 公開
[徳岡晃一郎,ITmedia]
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問題意識を深め、広げる工夫

 社内の他部署、他部門の同期のメンバー、研修で一緒になった仲間、プロジェクトで一緒になった人などきっかけはいくらでもある。とくに、自分よりも上位の問題意識の高い他部門の管理職に、伝をたどってアプローチすることをお薦めする。自分では見えない他部門の世界や上の目線を持っているからだ。こうしたネットワークで自分の世界が広がれば、当然自分の問題意識は深くなり広くなる。そこから勉強が始まる。すでにあなたはもうシャドーワークを始めている。

 こうした効果のゆえに最近では、社内SNSや運動会、社員旅行など社員をつなげる活動が企業で取り組まれ始めていている。各自がシャドーワークの文脈をもって臨めば、そこを気づきを得る創造の「場」として活用でき、その効果は大いに上がるだろう。単なる社員のガス抜きとはことなるはずだ。

 日本企業は現場主義ゆえに、社内でも十分深く広い暗黙知が溜まっているので、こうして社内人脈を拡げていく効果が高い。専門性が叫ばれる今日、知ったかぶりをする社員が多くなっているが、会社は広く、ビジネスプロセスは長く複雑だ。もっと謙虚になる必要がある。「会社検定」があってもいいだろう。

 一方で、社外の人脈も大切だ。そこには社内では創造もしない知が詰まっている。前提条件が違うことが大きい。社内では当然無理、過去にやって失敗した、そんなことが競合他社ではできていたりする。こうした社外の知は、発想を拡げてくれ自分の夢を膨らませてくれる。「それならば自分だってこうしてみたい」と、シャドーワークの扉が開かれる。

 また自分の仕事に関連する専門組織との付き合いも貴重だ。自分の知識は経験ベース、会社の枠内のベースであるのが普通だが、実は専門領域は結構深い。社内の人事のプロが人事の普遍的専門知識を身につけているとは限らない。業務処理基準やプロセスは知っているが、最新のアメリカでの人事の研究論文には目を通していないだろう。各分野には必ず専門の研究領域があるはずだ。そこにあなたはつながっているだろうか。

 専門性を深めることと広がりを持つことの合わせ技が、他業界のベンチマークや人脈作りだ。トヨタがレクサスを立ち上げるに当って、自動車業界のおもてなし水準では満足できずに、他業界それも世界でトップクラスのサービス水準で顧客満足を獲得しているリッツカールトンホテルをベンチーマークし、社員を送り込んで研修させたことは有名な話だ。当時のレクサス開業プロジェクトのメンバーの思いが嵩じて、自動車業界の中での一番を狙うのではなく、自動車業界からは見えない世界にシャドーワーク的にアプローチしたわけだ。こうした社外との接点により、レクサスの接遇やサービスの基準は高められていった。

 このように、社内・社外での多くの質の高い接点を持つことにより、自分だってもっとやってやろう、この会社をもっとよくしよう、自分の力をもっと付けておこうというように、成長のドライブがかかっていく。ITの専門家は、社内の知にアクセスしやすいはずだし、社外でも専門性が明確になっているほうだ。ぜひ、人脈を拡げて、自分のシャドーワークを推進し、より創造的な目標設定をしてほしい。

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プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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