コスト削減などを目的にオフィスソフト「OpenOffice.org」を採用する企業が増えている。だが「コスト削減以外に明確な目的を持たないと導入は成功しない」と住友電工の大釜秀作氏は言う。
自動車や情報通信など幅広い分野の事業を手掛ける住友電気工業(住友電工)は、従業員数が1万1000人を超える大規模なメーカーだ。同社は4月にオープンソースのオフィスソフト「OpenOffice.org」の導入を全社で推進すると発表した。事務所内の関連会社を含めた約1万5000台のPCを対象に、年間500〜600台を入れ替えていく予定という。
一部の企業や自治体では、既に導入しているMicrosoft OfficeなどのオフィスソフトをOpenOffice.orgに入れ替えるといった動きが出ている。無償で公開しているオープンソース製品を取り入れることで、ライセンス費用の削減を進めるのが主な狙いだ。
そのような中、住友電工はコスト以外の効果も見込んでOpenOffice.orgの導入を進めている。同社の情報システム部セキュリティ技術グループで主席を務める大釜秀作氏は「OpenOffice.orgの導入を成功に導くには、コスト削減以外の目的を明確に持つことが必要だ」と述べる。
同社がOpenOffice.orgを導入する狙いは大きく分けて2つある。1点目は国際標準の文書フォーマットであるODF(Open Document Format)への対応だ。各地に工場や拠点を持つ同社では、今後取引先の企業からODF形式のファイルを受け取る可能性が高く、どのようなオフィスソフトのファイルでも開けられるようにする必要があった。
2点目は業務環境の底上げだ。同社はオフィスソフトの導入を、企業全体ではなく、拠点や組織ごとに行い、管理もそれぞれに任せている。ライセンスの費用の問題や、業務で頻繁に使わないといった理由から、オフィスソフトを導入していないPCも数多く存在している。「例えば工場において、保有している2、30台のPCのうち、WordやExcel、PowerPointなどがフルセットで入っているPCは数台ということもある」と大釜氏は言う。
「ODFという世界標準に準拠しているオフィスソフトを導入することで、拠点間における導入のばらつきを解消し、業務環境の改善やデータの共有などを進めたい」(大釜氏)
こうした取り組みは、コスト削減を目的にしたものではない。
OpenOffice.orgなどの無償のオフィスソフトを使う場合、サポートサービスが付いている有償のオフィスソフトと違い、トラブルが生じた場合のメンテナンスや従業員へのサポートは、企業が率先して行う必要がある。「サポートができない企業はOpenOffice.orgの運用ノウハウを外部から購入する必要がある。コストの削減という目的でOpenOffice.orgの導入を進める企業は、サポートにコストが掛かることを忘れてはいけない」と大釜氏は警鐘を鳴らす。
「自助努力のできない企業はOpenOffice.orgの導入を成功に導くことは難しい。企業がOpenOffice.orgを導入する場合、オープンソースのソフトは無料なのでコストの削減効果が出るという考え方は成立しない場合が多いのではないか」(大釜氏)
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