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» 2008年08月18日 08時54分 公開

MS Officeの禁止令は出さない:「コスト削減以外の目的がないと成功しない」――住友電工がOpenOffice.orgを採用した理由 (2/3)

[藤村能光,ITmedia]

 住友電工は2007年10月にOpenOffice.orgの検証を開始した。「文書作成や表計算など基本的な機能が使えるか」といった簡単な判断基準を定めてテストを重ねた。ExcelやPowerPointなどをOpenOffice.orgで開いて、レイアウトがほぼ崩れないことなども判断材料とした。

 その後、同社のIT系のグループ企業でシステム開発を手掛ける住友電工情報システムに実際に業務で活用してもらった。約300人の従業員が実際にOpenOffice.orgを使った結果、マクロやPowerPointのアニメーションなど凝った使い方をしなければ、実運用に耐え得ることが分かった。

 しかし大釜氏は不安を持っていた。あらかじめPCにオフィスソフトがインストールされていれば、それを使い続ける従業員が大半で、新しいソフトをわざわざインストールして使うといったことはしないのではないかと考えたからだ。そこでOpenOffice.orgなど新しいソフトウェアを根付かせるための仕組み作りを掲げ、OpenOffice.orgへの切り替えを支援する体制の構築に注力した。

OpenOffice.org導入スケジュール OpenOffice.orgの導入スケジュール。1年にも満たない期間で導入までこぎ着けた

MS Officeに似せた設定でユーザーの不安を取り除く

 まず、OpenOffice.orgのフォントやヘッダ/フッターの有無といった設定をMS Officeに近づけた。またMS Officeと同様の使い勝手を出せるように、互換性を高めるテンプレートや初期設定を簡単にするためのインストーラを取り入れた。

 OpenOffice.orgのインストールの方法や基本的な使い方などを掲載した専用のWebサイトには、代表的な問題や質問と回答をまとめたFAQ(Frequently Asked Questions)を掲載した。Webサイトで解決できない問題を投稿できるヘルプデスクも用意し、OpenOffice.orgの技術担当者3〜4名が、従業員の疑問の解消に努めている。ヘルプデスクでのやり取りはその都度FAQに掲載し、ノウハウを共有できる土台を作っている。

 対面での研修も充実させた。外部から講師を招き、表計算ソフト「Calc」、文書ソフト「Writer」、プレゼンテーションソフト「Impress」などの基本的な使い方を1日がかりで教える。社員全員がいつでも教育を受けられるように、e-ラーニングの環境も整備した。

 これらの構築に掛かった金額は約1000万円。オープンソースのソフトを導入したからといってすぐさまコストを減らせるわけではない。実際、コスト削減の効果は「今はまだ現れていない」(大釜氏)という。だが、「今はコストを取り返すという考えはあまりなく、あくまでODFへの対応と業務環境の底上げが目標にある」と大釜氏は振り返る。

地道な下地作りがOpenOffice.org普及に一役

OpenOffice.orgの社内での活用 OpenOffice.orgをインストールしたPCを使う様子(住友電工提供)

 OpenOffice.org活用の下地を作ったことが奏功したのか、現在までに「約1000のインストールがあった」(大釜氏)という。各拠点でインストール数の差はほとんど生じず、「受け入れられるか心配だったが、好スタートが切れた」格好だ。

 現在は、社内においてMS OfficeとOpenOffice.orgの併用を進めている。「Microsoft Officeに禁止令を出しているわけではない」と大釜氏が言うように、全社導入は急がない。MS Officeで十分にカバーできる業務も少なくないからだ。

 今後の目標として「OpenOffice.orgの8000インストール」を掲げる。この数は同社がPCに現在導入している有償のオフィスソフトの数に相当する。「8000インストールまで導入が進めば、OpenOffice.orgはMS Officeなどと同等であると胸を張って言える。ここまでくれば、コスト削減という名目のもと、有償Officeソフトの導入削減に踏み込んでいける」(大釜氏)

 「全社的な移行などができない会社は、インストールベースを増やすことから始めるといい。IT系の企業では社長などの一声でプロジェクトが進む場合もあるが、そうしたケース以外では地道な取り組みが必要となる」(大釜氏)

 OpenOffice.orgを導入には地道な支援やサポートが必要不可欠となる。OpenOffice.orgの採用を検討する企業は、何のためにOpenOffice.orgを導入するのか、導入後のサポートに責任を持てるかといったことを考えてみる必要があるといえそうだ。

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