CRMの新潮流

CRMを振り返る――何がいけなかった?CRMの新潮流(1/3 ページ)

第2回では従来型のCRMを振り返ってみる。従来型CRMの問題点を俯瞰することで、CRM2.0への理解を深めるのが目的だ。

» 2008年08月29日 08時00分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

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 前回はCRM2.0とは何かについて解説した。第2回では、従来型のCRMを振り返ってみる。従来型CRMの問題点を俯瞰することで、CRM2.0への理解を深めるのが目的だ。

従来型CRMは三つの形態に分類できる

 従来型CRMは大まかに「分析系」「実行系」「統合系」の三形態に分類できる。さらに実行系は「セールス系」と「コンタクトセンター系」に分類される。それらを整理したものが下図である。表中に挙げている製品は従来型CRMにおける代表例であるが、いずれも何らかの形でCRM2.0への取り組みも行っている。

 「分析系」では顧客の購買履歴を基にキャンペーン施策を練るなどのデータ分析をする。社内の管理/マーケティング担当が主な利用者となる。業務プロセスの遂行に際してデータを蓄積し、それを分析して次に生かすという意味では現在のBI(Business Intelligence)に相当する。

 分析系のCRMは、広義のBIととらえられる。「実行系」は社内の営業やサポートによる実業務との関連が深い。営業担当者が自身の顧客訪問履歴を管理し、成約率向上に役立てるものが「セールス系」である。これは旧来からSFA(Sales Force Automation)と呼ばれていたものであり、該当する製品が最も多いカテゴリでもある。

 一方、「コンタクトセンター系」は既存顧客に対する窓口としてサポート担当が主に活用するものであり、CTI(Computer Telephony Integration)などITテレフォニー技術との関連が深い。ITテレフォニーは新規顧客獲得時(アウトバウンド)にも活用すべきものであり、その利用場面はアフターサポート(インバウンド)に限ったものではない。

 しかし、多くの企業においては営業担当が新規顧客獲得、サポート担当が既存顧客のロイヤルティ向上に努めるといった役割分担が一般的である。前者ではSFAによるデータ管理、後者では顧客からの急な電話問い合わせに応えるためにITテレフォニーが活用されている。ここではそうした実態に合わせて、営業担当のための「セールス系」とサポート担当のための「コンタクトセンター系」に分けることにした。

 「統合系」はERPにおける販売管理モジュールの延長線としてCRM的な機能が提供されるパターンである。販売管理モジュールは財務会計モジュールに売上情報を渡すことが主な目的であり、営業情報そのものを取り扱うことが主眼ではない。しかし、それではせっかく営業担当が入力した情報を生かしきれない。そこで販売管理モジュールと連携させる形でSFAに近い機能を付加する。販売管理が基幹系を意識した内向きの営業情報活用であるとすれば、統合系CRMはERPにおける外向きの営業情報活用ということができるだろう。

導入すべき順序と現実とのギャップ

 これらCRMの三形態は独立して存在しているわけではなく、互いに関連している。特に分析系は実行系に分析の対象となるデータの収集を依存しているため、導入の順序を間違えると本来の効果を得ることが難しくなる。その点を踏まえながら、従来型CRMの理想的な導入ステップを見てみることにしよう。

 最初に導入すべきなのは新規顧客開拓を主な目的とするセールス系CRMである。見込み顧客データや営業による訪問履歴データを蓄積し、それを営業の現場で生かすことによって「顧客に関するデータを業務に活用する」という素地を作る。既にERPを導入している企業においては販売管理モジュールと連携させるために統合系CRMを選択する場合もある。

 次はコンタクトセンター系CRMの導入だ。既存顧客からの電話応対にも素早く対応し、かつ的確なサポートを行うことで顧客のロイヤルティを維持・向上させることが狙いである。ここでも既存顧客に関するデータ蓄積が重要であることは言うまでもない。

 最後に分析系CRMを導入し、実行系CRMが蓄積した新規及び既存顧客に関するさまざまなデータを分析することによって、新規顧客開拓と既存顧客のロイヤルティ向上を目指すさまざまな施策を打っていく。新規顧客と既存顧客の双方の動向を把握していることがポイントである。自社の製品やサービスの知識を十分持っている顧客に新規顧客向けカタログを送ってしまったり、逆に新規顧客であるのにいきなりアップセルを促すDMを送ってしまったりといったミスを防げる。

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