FAAネットワークのクラッシュが暗示するもの古い橋のように

米連邦航空局(FAA)の飛行計画ITネットワークが8月26日の昼休み直後にクラッシュし、全米40カ所以上の空港で航空機の離発着ができなくなった。FAAのネットワークは古い橋のようによく落ちる。そうそうあってほしくないことだ。

» 2008年08月30日 08時00分 公開
[John Hazard,ITmedia]
eWEEK

 米連邦航空局(FAA)の飛行計画ITネットワークが8月26日の昼休み直後にクラッシュし、全米40カ所以上の空港で航空機の離発着ができなくなった。よくある話だ。FAAのITスタッフと契約業者はシステムを大急ぎで復旧し、数時間後に再稼働させた。手際のよい専任スタッフならお手のものだ。

 同様のネットワークを管理している人々の話によると、FAAのネットワークは直前まで正常に動いていたという。このネットワークは1日60万回以上の航空機の離着陸を管理し、数百万の旅行客の安全を守っている。驚くべきは、そのネットワークがレーガン政権時代にインストールされたメインフレームシステムに依存しているという事実だ。システムの納入メーカーは20年前に事業から撤退した。現在、システムは西海岸と東海岸の2カ所のサイトで稼働し、それぞれが相互にバックアップする仕組みになっている。

 それにしてもFAAのネットワークは、まるで古い橋のようによく落ちる。日常茶飯事といっては言い過ぎかもしれないが、こうした出来事はそうそうあってほしくない。2007年8月、ミネアポリスで築40年の橋が崩落し、13人が死亡、100人を超える負傷者が出た。全米第16位の大都市を走る重要な幹線道路は、その後数カ月にわたって遮断された。もし毎日数百万人の命を預かるFAAのネットワークが同じように崩落したら、ミネアポリス以上の大惨事になる可能性は十分にある。

老朽化するインフラストラクチャ

 FAAの広報担当によると、今回のクラッシュはファイルの破損が原因だったという。しかし、NADIN(National Airspace Data Interchange Network)を含むFAAのインフラがダウンしたのは、今回が初めてではない。

 FAAが運用するNADINには長い歴史と物語があり、人間ならそろそろ法的に飲酒が許される年齢を迎える。旅行サイトTripso.comのライターでFAAの内情に詳しいチャーリー・レオチャ氏やPortfolio.comのケビン・ケレハー氏は、今回のクラッシュを含め、FAAネットワークの苦難の歴史をそれぞれのサイトで振り返っている。

 ある地点から別の地点まで、たとえオンタイムではないにしろ、われわれを安全に運んでくれるはずのインフラストラクチャがこれほど脆弱なシステムでは、機内でおちおち惰眠をむさぼることもできない。

 だが、現実の道路や橋を崩落させてしまう行政が、仮想の道路や橋の整備に力を入れているとは考えにくい。米土木学会の最新の「Report Card for America's Infrastructure」でも、米国政府は”D”と評価されている。

 いずれにせよ、われわれの仮想インフラは見えないところで老朽化が進みつつあるようだ。実際、それらの多くは、構築されてから10年、20年の年月が経過している。FAAの今回のシステムダウンは、われわれの社会が依存するコンピュータとそれらがサポートするインフラの「実年齢」を思い出させてくれた。いまや彼らもミドルエイジと呼ばれる年代に達している。そろそろ年相応のほころびがあちこちに出てくるはずだ。

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