「FeliCa以上の利点がなければ、ユーザーは(NFCに)乗り換えない」
NTTデータのビジネスソリューション事業本部、モバイル&ICメディアビジネスユニットでソリューション開発担当を務める大熊喜之課長は、NFCを取り巻く現状をこう説明する。
国内ではおサイフケータイを使うためのインフラが整いつつある。キャリア、通信事業者、コンテンツプロバイダーのそれぞれがFeliCaで利益を上げるためのノウハウを持ち、国内のユーザーは既にその恩恵を授かっている。「決済機能や交通券以外のリッチコンテンツをNFCで使えるようになれば、日本の携帯電話のキャリアも飛びつくはず。商用化には、海外からの外圧も必要だ」(大熊氏)
大熊氏もNFCの商用化には「2、3年ほどかかる」と述べ、木下氏と同様の見解を示した。
NFCがFeliCaを超えるとすれば、海外から日本に来た観光客に対しNFCケータイで販売促進を展開できるなど、世界標準の規格に対する評価が高まった時だ。また家電製品に組み込めるため、「おサイフケータイ以上に、消費者の生活に浸透する」(余伝氏)可能性も秘めている。
NFCの普及には「NFCケータイの仕組みがビジネスモデルとして成り立つか」(大熊氏)という問題が、大きな壁として立ちふさがる。NFCケータイがどれだけ日本で浸透するかは現段階では未知数だが、海外では50以上の実証実験が行われている。フィンランドのNokiaは既に、NFC対応の携帯端末を世界に先駆けて発売している。
今回取材をしたソフトバンクモバイル、NTTデータともに「収益を出せるビジネスモデルは模索中」という。だが、各社とも「世界標準のNFCを用いたサービスが始まったときに対応できる」(余伝氏)ための下地作りに布石をうっている。NFCという“黒船”の襲来に備え、今後キャリアや端末メーカーなどは、NFCの開発や実験競争を繰り広げていくだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.