今こそクラウドサービスをビジネスチャンスにWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年11月04日 10時40分 公開
[松岡功ITmedia]
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世界的な景気減速とクラウド化の「必然」

 富士通とNECの決算会見での話からは、このところの世界的な景気減速が企業向けITビジネスに影を落としている感じは、現時点でほとんどないようにみえる。それは、両社と同様、先週に決算を発表した大手システムインテグレーター各社の通期業績予想をみても然りだ。ただし、そうした大手システムインテグレーターの首脳もそれぞれの会見では、「景気悪化の影響が今後どのように出てくるか、今年度下期まで通して見てみないと分からない」と異口同音に発言している。

 一方で、非常に厳しい見方をしているITベンダーもある。10月28日に2008年12月期第3四半期の決算発表を行った大塚商会は、発表資料の中で「夏場以降、景況感の悪化や収益悪化懸念から、企業のIT投資に慎重な姿勢が強まってきた」と指摘している。幅広い業種の中堅・中小企業を顧客に持つ同社のこの指摘は注視すべきだ。

 富士通やNECに代表されるように、先週までに出揃った大手ITベンダーの直近の四半期決算における企業向けITビジネスは、概ね堅調だった。ただ、今後は楽観視できない。景気停滞がこのまま続くと、今年度下期にも受注残が急速に減少していく事態になりかねない。ではどんな打開策があるのか。

 「こういう時だからこそ、例えばアウトソーシングなど、お客様の利便性向上やコスト削減につながる提案を積極的に行っていくべき。むしろ絶好のビジネスチャンスと捉えるべきだ」

 こう語るのは、富士通の加藤CFOだ。このコメントに筆者も触発された。もちろんアウトソーシングもまだまだ潜在市場はあるが、今こそSaaSをはじめとしたクラウドコンピューティングによるサービスを、新たなソリューションとして整備し提案していくことを考えるべきではないだろうか。加藤CFOの言う通り、こういう時期こそ、あらためて最優先すべきはユーザーメリットだ。そのためにクラウドサービスをストックビジネスとしてどう成立させるか。IT業界をあげて知恵を絞る時である。

 折りしも、先週は米マイクロソフトがクラウドコンピューティングによるサービスの全容を明らかにした。同社が言う「クラウドサービスとオンプレミス(自社で所有する)のシステムを対称にして利用可能にする」戦略は、これまでの企業向けITビジネスとクラウドをシームレスにつなごうという狙いがあるとみられる。これは取りも直さず、同社の新たなパートナー戦略でもある。マイクロソフトがこのようにクラウド化へ本格的に動き始めたことで、クラウドサービスは一段と具現化してくるだろう。

 このところの世界的な景気減速と、IT分野におけるクラウド化へのパラダイムシフト、さらにそれに環境問題を合わせて、この3つが今、同時に進行しているのは、必然のように思えてならない。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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