クラウドコンピューティングによって進化したSaaSは、SOAが目指すアジャイルな情報処理システム構築を低コストで実現できる可能性を秘めている。クラウドコンピューティングではハードウェアなどのコンピューティングリソースが抽象化されており、ユーザー側はデータ量やアクセス負荷の増大を気にせずにサービスを利用できる。
だが、クラウドコンピューティングの実体は従来の情報処理システムの延長であることに変わりはない。当然、システム障害も起こりうる。過去にはAmazon S3で障害が起き、その上に構築された多数のサービスが稼働できなくなることもあった。自社の情報処理システムのすべてにおいてクラウドコンピューティングを活用するのは、時期尚早といえるだろう。
システムを構築、利用する立場からすれば、何らかの形で冗長性を確保できることが望ましい。インターネットアクセス回線やVPN(仮想私設網)接続では複数のプロバイダーと契約しておき、どちらかに障害が起きても通信が途絶えないように冗長構成を組む手法が一般化している。
これと同じことをクラウドコンピューティングでも実現できればよいが、現時点では各クラウドコンピューティング基盤が提供する開発言語は統一されていない。ある基盤で開発したシステムをほかの基盤に移して稼働させるのは簡単ではない。今後は冗長性も含め、クラウドコンピューティングの本格活用に向けての議論や開発が進んでいくだろう。
3回にわたってクラウドコンピューティングがもたらすSaaSの将来像を言及してきた。現在は、SaaSがようやく軌道に乗り始めた段階といえる。そのため、本連載で述べたことが実現するのはもう少し先になるかもしれない。
だが、情報処理システムは確実に所有から利用にシフトしており。その流れが逆行することはおそらくないであろう。その時の道しるべとして本連載を活用していただければ幸いである。
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