「Googleは、無償あるいは無償に近い広範なメッセージング/コラボレーションサービスを提供したいと考えているようだ。あらゆる規模の企業に対して、企業向けの主要なメールシステムであるMicrosoft Exchangeから移行するように促したいのだ」とフェリス氏は指摘する。
新しいユーティリティ用のサンドボックスとしてGoogleが6月に立ち上げたGmail Labsに支えられたGmailの発展、ならびにフェリス氏の指摘は、企業のニーズに対応したアプリケーションとしてGmailを進化させるという考え方を裏付けるものだ。
Gmailの一連の機能強化は、コンシューマーおよび企業向けWebメールアプリケーションをめぐる競争でYahoo!とMicrosoftを追い落とすという壮大な計画の一部であるのは間違いなさそうだ。
しかし、Gmailのプロダクトマネジャーを務めるキース・コールマン氏は、そういった目的に向けた壮大な戦略は存在しないと否定し、「Gmail担当技術者はこれらのツールを開発し、“ドッグフーディング”(自社製品の使用)と呼ばれるプロセスでそれらをテストするために社内の従業員向けにリリースしている」と述べた。Gmail Labsの設立は、基本的に社外の人々にドッグフーディングプロセスを開放するのが目的だ。コールマン氏はeWEEKの取材で次のように語っている。
「製品の将来に関するわれわれの考え方についていえば、どのような機能を備えるべきかといった具体的なビジョンがあるわけではなく、ユーザーが抱えている問題を解決することを念頭に置いている。Googleは問題を解決したいのだ。われわれは社内でこれらの問題について話し合い、スタッフがソリューションを提案するのを待ち、そのソリューションを試している。その一部が採用され、それが新製品になったり、製品の将来を変えたりするのだ」
この説明がGoogleの多くのソフトウェア開発の方針と驚くほど一致しているのは、単なる偶然だろうか。
Gmailの機能拡充についていえば、高機能アプリケーションをスクラッチから開発するのではなく、各種のツールを後からアプリケーションにつなぎ合わせるというのは、連携という面で問題が生じる恐れもある。
また、新しいガジェットツールがGmailの機能に干渉する心配はないのだろうか。コールマン氏によると、GoogleではAJAX技術を利用しているため、Gmailの動作に影響を及ぼすことなく新機能を追加することができるという。
コールマン氏の説明を信じるかどうかは別として、これらの新機能はGmailが企業志向を強めていることを示すものだ。Googleはこれを出発点として、Google Appsを企業にとって信頼できるソリューションにするための取り組みを開始するつもりかもしれない。
Gartnerのトム・オースティン氏やBurton Groupのガイ・クリーズ氏などのアナリストは、エンタープライズアプリケーションに求められる機能やセキュリティが欠如しているという理由で、Google Appsは企業ニーズへの対応が遅れていると繰り返し指摘してきた。Googleはこういった認識にも対処する必要があるのだ。
ソーシャルネットワークが普及したおかげで、多くの専門家やベンダーは、電子メールをユーザーのソーシャル/プロダクティビティ世界のハブと見なすようになってきた。
Googleが今後もGoogle Appsを企業市場で推進する方針であるとすれば、5000万人以上のユーザーがいるとされるGmailから進撃を開始するのは当然だ。
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.