オープン化で躍進するFacebookとOpenIDの行方ソーシャルメディア経済圏(2/2 ページ)

» 2008年11月25日 16時06分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]
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IDの可搬性を実現する「OpenID」

 SNSなどのソーシャルメディアがオープン化していくと、今後どのような変化が待っているのだろうか。亀津氏は、「アイデンティティのポータビリティ」と「データのポータビリティ」の2つが起きると予測する。

 SNSやブログ、動画・写真共有などの多様なソーシャルアプリケーションが登場するにつれ、ユーザーはそれぞれのサービスを利用するたびごとに繰り返さざるを得ないユーザー登録やログインなどの手間が不便に感じるようになる。そこで、Webサイト上のサービスを利用する際に、固有のURLをキーに共通して本人認証を行う「OpenID」に対応した取り組みが増えている。それがアイデンティティのポータビリティにつながるという。

 mixiは2008年8月20日に、同サービスのユーザーIDを利用して他のサービスにログインできるmixi OpenID認証を公開。既に14社ほどがこの認証を利用したサービスを提供している。このようなOpenIDが利用できれば、新規事業者もmixiの膨大なユーザーを誘導でき、さらにmixi側も追加開発なしに多くのサービスをユーザーに提供できるメリットがある。

図2 オープン化でいろいろ使えるようになったが、いちいちログインを繰り返すのが面倒

認証から認可までを共通化する標準化が進行

 ただし、OpenIDだけでは課題もある。OpenIDが実現するのはユーザーにおける同一性の「認証」(Authentication)の共通化まで。どのようなデータやサービスにアクセスできるのかといった「認可」(Authorization)やユーザーデータの属性の共通化には関与しない。この人は誰かなのかは分かるが、この人がアクセスできる権限や範囲といった属性までは特定できないわけだ。

 そのため、認証のOpenIDに加えて認可の共通化を目指した「OAuth」(オース)の併用が検討されている。OAuthとは、第三者に対し認証を要求するリソースへのアクセスを一時的に許可するためのプロトコルのこと。このOAuthをOpenIDのサブセットとして利用することで、認証から認可までの共通化を図るための標準化が進行している。

ユーザーの嗜好を総合的に把握できるライフログ

 「アイデンティティのポータビリティが進展していくと、ユーザーはさらに多くのソーシャルメディアを利用し始め、それらが緩やかにつながりはじめる」という亀津氏。例えば、SNSに書いた日記などのコンテンツを自分のブログにアップしたいとか、YouTubeにアップした誕生パーティの動画をブログにもアップしたいというような、ユーザーが各サービスの中に蓄積したデータを自由に移動させたいと思うニーズが増える。それが、データのポータビリティというわけである。

 既に、大手のソーシャルメディアがデータのポータビリティを意識してコンテンツの再利用やユーザーデータの統合に動き出している。GoogleはOrkutのユーザーのデータを一般のWebサイトにも掲載できるようにしたほか、MyspaceやFacebookなどはユーザーが登録したプロフィールや写真を外部サイトからアクセスできるようにしている。

 「データのポータビリティが実現してくると、複数のサービス間でデータの共有が行われ始め、ネット上でのユーザーの嗜好を総合的に把握できる可能性が出てくる」と語る亀津氏は、実世界の体験のデータがさまざまなサービスにも一貫して保持されることで、「ライフログ」とか「ライフストリーミング」と呼ばれる、個人の活動の記録・分析や追体験が可能になるという。

図3 コンテンツを使い回したいと考えるユーザーと、各メディア間で使い回せない現状

企業と顧客との新たな関係性の構築

 このようなIDのポータビリティやデータのポータビリティが普及することにより、分散したサービスやデータが徐々に収れんされていくという。また、消費者の体験が一貫して蓄積されるライフログやライフストリーミングは、企業にとって垂涎の情報となるに違いない。従来のような統計的なセグメンテーションやログ分析に頼る行動ターゲティングだけではなく、この人は潜在ユーザーか否か、購入者は満足か不満足か、どのような人々に影響を与えるのかなど、より具体的な消費者像が浮かび上がってくるからだ。

 ただし、今後は消費者のソーシャルグラフの中に位置づけられないと企業からのメッセージがフィルタされてしまうため、いかにユーザーやコミュニティと社会的なつながりを作って理解や賛同を得るかが重要になる。

 最後に亀津氏は、「今後、企業は一方的に『顧客にリーチする』『クリックを稼ぐ』という考えは捨て、『ユーザーをフォローする』『リレーションを持ち続ける』という意識で新たな関係性を作ることが大切」とアドバイスを残して講演を終了した。

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